前回までの解説では、自動化を前提にして業務フローを整理し、作業によって分類した上で部品化すると、環境変化にも柔軟に適応して、効率的な業務フローになるという話をした。しかし、部品をつなげるだけで効率化できるのは、それぞれの作業がほぼ一瞬で完了するような幾つかのケースだけとなる。業務の現場では一つの作業に要する時間は千差万別であり、同じではない。また、作業によっては、簡単に進行することと時間がかかることが組み合わされていることも多く、その場合、時間がかかる作業の前に待ち行列ができてしまうことになる。
今回は業務フローが単純な一直線でできておらず、作業時間もばらつきがあったり、条件分岐があったりする複雑な場合の効率化における基本的な考え方について解説しよう。
全部そろわないと実行できないのでは効率が悪過ぎる
業務フローの概念は、1本の長い直線のような形で表現することができる。それぞれの作業を大きな塊にしてつなぎ合わせることで、1つの長いフローが完成している。しかし、その内の幾つかが動かなくなる、または効率の違いによって、ある作業が早く完了する一方で、ある作業は時間がかかるなどの場合、作業フローの組み合わせの塊である業務フローが完了する間に、どうしても最も時間のかかる作業に全ての速度が引っ張られることになる。もし、業務フローを構成する内の一つの作業が止まってしまった場合、その原因を取り除かない限り、それ以降の全ての作業が止まり、業務フロー、すなわちビジネスが止まってしまうことになる。
一連の作業の流れを表すに当たり、「オーケストラ」が引き合いにされることがある。最初から最後までいろいろなセクションの楽器パートをうまく調整しながら、1つの曲を演奏することに例えられているが、もしどこかの楽器が演奏されなかったり、演奏を間違ってしまったりしたら、曲をもう一度最初から演奏し直すだろうか。何度も練習を繰り返して毎回完璧な演奏がされるなら、指揮者も安心して指揮できるかもしれないが、そのオーケストラによく間違えたり、調子が外れた音を出したりする演奏者がいるとしたらどうだろうか。とてもではないが、安心して指揮棒を振ることなどできないだろう。それにもまして、同じ場所で何度も間違う演者がいるならば、演奏会を催すまでに至らないかもしれない。もしかしたら間違うのではないかと心配になって、いつまでも同じパートばかり練習していても、曲を完奏できなければ無意味になってしまう。
このような不完全な場合であっても、部品化は非常に重要である。部品化することで、それぞれのクオリティーを高めることが容易になり、改善を図るにしても、少しの手間だけで済むようになる。大きな塊として1つにしてしまうと、不便なだけではなく、最後まで行き着かないと言うことになってしまい、本来の目的を全く果たせなくなってしまうことは言うまでもない。