海外コメンタリー

インドに現れたEdTechユニコーン「Physicswallah」、その生い立ちと信念

Rajiv Rao (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2022-07-28 06:30

 インドのEdTech企業であるPhysicswallahは、物理学をはじめとしてあらゆる理科の教科を教えるサービスを提供している。同社は、この競争の激しい市場に彗星の如く現れて1億ドル(約136億円)の資金を獲得し、企業価値は早くも10億ドル(約1360億円)に達した。

オンラインで学習する人
提供:Getty Images/iStockphoto

 同社が短期間でスターダムを駆け上がることができた理由は簡単だ。Physicswallahの創業者であるAlakh Pandey氏は、同社をほかの企業とは異なる方法で経営している。そのやり方は、さまざまな業界や分野の起業家に重要な教訓を与えてくれるはずだ。

 ウッタル・プラデーシュ州のプラヤグラジ(旧称アラハバード)で育ったPandey氏は、父親が病に倒れて家族を養えなくなったため、低学年の子どもたちの家庭教師をしてお金を稼がざるをを得なくなった。Pandey氏の説明によれば、4年生と6年生の生徒を教え始めたときには、まだ同氏は8年生だった。

 そして11年生の頃には、同氏が物理学の家庭教師をしていたときの生徒の反応で、これを仕事にできるという確信を得たという。ただしPandey氏は、インド工科大学のような名門大学の工学部に入学することはできなかった。これは、名門校の志願者にとっては当たり前になっている、入試を突破するための個人指導コースを受けるのにかかる費用が、貧しい同氏の家庭にとっては高すぎたからだった。

 一方Pandey氏は、長年にわたってずっと家庭教師を続けていた。同氏が事業のアイデアを思い付いたのは、地元の工科大学に入学したものの、そこで教えられていた物理学の授業には欠けている部分があり、自分の方がずっとうまく教えられることに気づいたからだという。

 そこで同氏は、2年通ったところで大学を中退し、対面での個人指導センターを立ち上げた。当初は収入が月に5000インドルピー(約8500円)ほどで、細々と暮らすのがやっとだった。その後同氏は、2014年に開設していたYouTubeチャンネルに授業を展開したが、収益化を始めたのは2017年になってからだった。

 このチャンネルは最初の年に1万人のチャンネル登録者数を獲得したが、すぐにその数は700万人に膨れあがり、視聴回数も12億回を超え、現在最も話題になることが多いEdTech企業の基礎になった。

 Pandey氏がヒンディー語で行っている授業が絶大な人気を集めているのは、科学を教えるテクニックが優れているだけでなく、失恋の話題や、詩や、さまざまな逸話や、同氏の人生経験の話などへのちょっとした寄り道が、独自の味になっているからだ。また同氏は、複雑なテーマを理解しやすい簡単な説明に落とし込む能力を持っていることで知られている。

 親しみやすく、陽気で、真性の科学オタクであるPandey氏は、コロナ禍で学校が閉鎖されると非常に人気を集め、同氏の最初のライブ授業は、学生が殺到したためにサーバーがクラッシュしたほどだった。

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