デル・テクノロジーズは、ストレージをアズ・ア・サービス型で利用する「APEX Data Storage Services」の提供を開始した。「APEX」ブランドでサービス事業の拡大を図る同社の動きだが、キーワードがマルチクラウドになる。米Dell Technologiesのグローバル スペシャルティ セールス担当シニアバイスプレジデントのKyle Leciejewski氏がマルチクラウド戦略について説明した。
米Dell TechnologiesのKyle Leciejewski氏。ストレージ プラットフォーム ソリューション全般の営業責任者として、マルチクラウドおよびas-a-Serviceソリューションなどを担当する
まずLeciejewski氏は、クラウドトレンドの観点からマルチクラウドを説明した。マルチクラウドは、複数のパブリッククラウド、オンプレミス、エッジ、コロケーションを含むが、同氏は「95%の企業がハイブリッドとマルチクラウドが自社の成功において重要と考えている。マルチクラウドは事業の成長とイノベーションの源泉になっている」と述べた。
一方で、企業は最初からマルチクラウドを想定したアーキテクチャーを組んでおらず、現在は「結果としてマルチクラウドになった『マルチクラウド・バイ・デフォルト』」(Leciejewski氏)という状況。これは、運用・管理、経済、技術などの面で課題をもたらしているという。「そうではなく、きちんと設計された『マルチクラウド・バイ・デザイン』にシフトすることが必要だ」とLeciejewski氏は指摘した。
Dellが提唱するきちんと設計されたマルチクラウド「マルチクラウド・バイ・デザイン」
それを実現するのが「APEX」だという。APEXは、Dellが2020年10月に「Project APEX」として構想を発表したもので、製品をアズ・ア・サービス(買い切りではなくサービスとして利用)で提供するもの。シンプルさ、アジリティー、管理性などのメリットをもたらすことを目指し、「データ」「アプリケーション」「開発者」向けの3つ分野の課題を解決するという。
データでは、同社は「APEX Data Storage Services」の提供を開始したところだが、この他にも「APEX Dell Managed Colocation」、パブリッククラウド向けのファイルとブロックストレージ「Project Alpine」などのポートフォリオを持つ。
DellがAPEXブランドで提供するストレージ製品
APEXでは、ストレージだけでなくデータ保護もカバーする。バックアップの「APEX Backup Services」、データ保護「POWERPROTECT Data Protection」などだ。
ストレージではデータ保護製品もそろえる
Leciejewski氏は、顧客事例として、米国ヘルスケアサービスのSentara Healthcareを紹介した。法律に準拠する必要からコロケーションでストレージを配備し、これを「Microsoft Azure」に近づけることで、迅速に災害復旧できるようにした。ハイブリッド/マルチクラウド型のストレージにより、スタッフが容易に情報へアクセスできるようになったという。「アプリケーションデータの応答時間は1ミリ秒未満、データへのアクセスは10倍高速になった。IOPSは最大8倍高速になった」とLeciejewski氏。コスト削減は「数百万ドル規模」を実現したそうだ。
2つ目のアプリケーションでは、コンテナーを挙げた。APEXブランドでは、マルチクラウド環境のコンテナーオーケストレーションのアプライアンスを提供する。「オンプレミスからクラウド、クラウドからオンプレミス、あるいは双方向のアクセスをサポートできる。Microsoft、Amazon、Google、Red Hat、SUSE Rancherもサポートする」とLeciejewski氏は言う。
この他にもパブリッククラウドの使い勝手とプライベートクラウドのセキュリティや管理性を備えるインフラ・アズ・ア・サービスの「APEX Cloud Services with VMware Cloud」をはじめ、「APEX Hybrid Cloud」「APEX Private Cloud」などを紹介した。
Dellのマルチクラウド戦略におけるアプリケーション分野の製品群
3つ目の開発者では、任意のクラウド環境でアプリケーションとサービスのデリバリーを高速化する。その背景についてLeciejewski氏は、「開発者の作業時間のうち、実際にコードを書いている時間は20%。つまり、残る80%はコードを書いていない」と、問題を指摘する。なお、これは地域と業界に関係なく共通しているという。
DellのアプローチとしてLeciejewski氏は、「自動化や消費可能なAPIを提供することにより、インフラ・アズ・ア・コードを加速する」と説明。ビルドインのコンテナーとKubernetesのサポート、アプリケーションとリソースの実装自動化なども提供するという。そのような機能を含むプラットフォームに加えて、カタログ化されたAPI、セルフサービスポータルなども用意すると続けた。
開発者向けの取り組みでは開発者の生産性を高めるサービスをそろえる
最後にLeciejewski氏は、エコシステム戦略として、パートナーの重要性にも触れた。パートナーエコシステムは総じて「600億ドルを上回る規模」の売り上げに達しており、「業界最大だ」と同氏は強調する。
パートナーの1社がVMwareになる。VMwareは、EMCの買収を通じてDellの傘下に入っていたが、2021年11月にDellからのスピンオフが完了。2022年5月にはBroadcomがVMwareを買収することで合意したことを発表している。
Leciejewski氏は、VMwareとの関係について「技術面では複数年の契約を結んでおり、両社の技術を組み合わせた『VxRail』のようなソリューションの構築を継続することで合意している」と説明する。VxRailについては、「販売ノード数が10万ノードを達した。ハイパーコンバージド分野で最も成功している製品だ」と述べた。