インターネットイニシアティブ(IIJ)は7月28日、自社のカーボンニュートラルに関する取り組みについて説明会を開催した。
120の国と地域が2050年までのカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを行う中、日本政府は「グリーン成長戦略」の一環として、2040年までのデータセンター(DC)におけるカーボンニュートラル実現を掲げている。そのため、DC事業を行う企業は省エネと再生可能エネルギーの利用を推進することが求められている。
また、省エネ法の改正により電力使用効率(PUE)を報告することが義務付けられ、目指すべき水準としてPUE1.4以下が定められている。PUEは、DC全体のエネルギー使用量をIT機器のエネルギー使用量で割って算出する。
IIJグループは、ネットワーク関連サービスの提供による社会活動の効率化やクラウドサービスの提供によるコンピューター資源の共有などにより温室効果ガスの削減に貢献している一方、これらのサービス提供には電力の利用が不可欠である。IIJは自社における温室効果ガスの排出量(Scope1、2)の7割以上を占めるDCにおいて、再生可能エネルギーの利用とエネルギー効率の向上に取り組んでいる。
同社は2030年度までの数値目標を掲げており、再生可能エネルギーの利用ではScope1、2における再生可能エネルギーの利用率を85%まで引き上げ、エネルギー効率の向上では技術革新により自社DCのPUEを1.4以下にすることを目指している。
再生可能エネルギーの利用率向上をを85%までとする背景には、松江市と白井市以外のDCは他事業者のDC内に開設しているため、単独での排出抑制に取り組めないという事情がある。再生可能エネルギーの利用率が他事業者内のDCで0%だったとしても、松江/白井市のDCにおいて100%にすることにより、全体で85%という数値の達成を目指している。
IIJは2030年までの目標達成に向けた取り組みを紹介。同社は外気冷却コンテナーモジュール「IZmo」を開発し、2011年4月の松江データセンターパーク(松江DCP)開設時に採用した(図1)。その結果、松江DCPは2017年度から国内最高水準だというPUE1.2で安定的に稼働している。
図1:IZmoの外観
また、同社は「白井データセンターキャンパス」(白井DCC)において事業継続計画(BCP)用蓄電池を活用し、バーチャルパワープラント(VPP)事業に参画する。VPPとは、企業や自治体が所有する蓄電池や小規模発電施設など、地域に分散した電源設備を中間事業者「アグリゲーター」が統合的に制御することで一つの発電所のように機能する仕組み。今回のVPP事業は、関西電力がアグリゲーターとなって進める。
IIJはVPPの電力需給管理方法の一つであるデマンドレスポンス(DR)において、蓄電池の余力やオンサイト太陽光発電を活用して電力使用の抑制要請に応じ、アグリゲーターから報酬を得ることでDCの運用コスト低減を図る。7月から実効性をテストし、2024年4月から将来の供給力を取引する「容量市場」での実需給を行う。
説明会に登壇した基盤エンジニアリング本部長の山井美和氏は「DCのカーボンニュートラル実現に向け、仮想的につながったDCが一つの大きな塊としてクラウド時代を支える姿を思い描いている。データが集まる『データセンター』からよりアプリケーションなどが組み合わさった『ハイパースケールデジタルコンプレックス(超巨大デジタル複合施設)』へと変化することをイメージしている」と展望を語った。