ガートナージャパンは8月2日、データとアナリティクスのガバナンスの取り組みに不可欠な7つの要素を発表した。
同社によると、データとアナリティクスによってデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進したいという企業の期待は高まり続けているという。また、データ/アナリティクス領域への投資は、組織に持続可能なビジネス成果や価値をもたらす「データ資産」の管理が必要であり、それらを秩序を保ちながら管理するために「ガバナンス」が求められるとする。
他方、ガバナンスの理解が不足していたり、その遂行能力が十分でなかったり、といった状況が多く見られ、特に日本においては、データ/アナリティクスのガバナンスの取り組みに着手していない企業も多く、「どこから始めればよいか」「何が必要か」といった問い合わせが圧倒的に多数を占めているとのこと。
アナリストでシニアディレクターの一志達也氏は次のように述べる。「現在組織が直面している複雑で多様なビジネス上の課題に対応するために、デジタル/アナリティクスのリーダーは経営層を巻き込んで、適切なガバナンスの基盤を整備しなければならない」
同社が掲げる、デジタル/アナリティクスのガバナンスに不可欠な7つの要素は次の通り。
- 価値や成果:ガバナンスに関連する活動が組織の価値や事業の成果に結び付いていることを証明するために、測定可能な指標を定め、定期的にステークホルダーに示すことが必要である
- 決定権と責務:ガバナンスの原則やルールを定めるには、経営層や事業責任者のようなビジネス上の意思決定権者の合意が不可欠となる。役員会や経営会議と同様に、ガバナンスの意思決定機関を設け、そこで意思決定が行われるようにしなければならない。同時に、その執行(普及や監督)を担う実務組織も不可欠であるため、専任で職務に当たる中央組織と現場を任されるスチュワードを編成・任命するとよい
なお、スチュワードとは、ビジネス部門内でデータポリシーを実行するために活動するデータ/情報スチュワードと、アナリティクス/ビジネスインテリジェンス(BI)/データサイエンスチーム内で活動し、ポリシーがそこで適用されるように努めるアナリティクススチュワードの役割が存在する。どちらも必要に応じて問題をガバナンス委員会に報告する役割を担うとする。 - 信頼:データ/アナリティクス資産の全てが組織内からもたらされるとは限らず、パートナー企業や情報ブローカー、オープンデータなど、組織外から得るものも必然的に多くなる。組織内外に分散し、複雑化した資産のガバナンスを実現するためには、来歴管理やキュレーションが欠かせない。それらを含めて、確立された信頼モデルによって信頼性を確認し、安全を確保する必要がある。信頼モデルは、執行組織やスチュワードを通じて組織全体へと展開され、ビジネス活動や意思決定をガバナンス面からサポートするために用いられている
- 透明性と倫理:ガバナンスは組織の掲げる倫理原則に従って行われなくてはならない。そのため、その状況について、組織内のみならず外部の監査に対しても十分な透明性を確保する必要がある。ガバナンスを執行する組織は、業務プロセスを定義して手順書を作成し、ガバナンスの実行方法や関係者の役割と責任を明確化する。また、全て投資や支出について監査証跡を残し、ガバナンスの決定事項との関係を明確にする
- 安全性の担保:ガバナンスは、リスクを意識しながら取り組むことが重要。情報リスクとセキュリティの管理は、事後的に行われるものではなく、ビジネス成果を目指しつつも、ガバナンスによってリスクを調整する本質的な取り組みであることが肝要となる。こうしたアプローチでガバナンスに取り組む組織は、DXを実現する上で、非常に有利な立場となり得る
- 教育:ガバナンスを扱うのは人であり、ガバナンスは人々の行動に変化を促す。そのため、何をどのように変える必要があるかを理解できる教育プログラム、その効果や浸透状況を測定する指標、人事評価との連動などについて、それぞれの専門組織と協力して整備することが重要である
- 協力と文化:組織のリーダーは、ガバナンスの考え方を統制(コントロール)から協力(コラボレーション)へと変化させ、その認識を組織各所に浸透させる必要がある。変革を支援するプログラムを整備し、ガバナンスが監視や統制の手段でないことはもちろん、方針や標準を周知してより良い成果につながる行動を促す手段として認識されるように努めることが重要である
ガートナーは、ガバナンスの7つの要素に取り組む際の順序は特に決まりがないとする一方で、「決定権と責務」のようなガバナンスを実現するための組織は、意思決定を行えるよう最初に体制を整える必要があるとする。また、「価値や成果」を中心として、全ての要素を取りそろえることが重要だと強調している。