日立製作所は8月8日、車いすや白杖などを利用する移動制約者の案内業務を支援する鉄道事業者向けサービス「移動制約者ご案内業務支援サービス」の提供を発表した。西武鉄道や小田急電鉄で開発、導入したシステムをベースにSaaS化したもので、先行してJR九州で運用が開始されている。
日立によると、案内支援業務では、移動制約者からの連絡を受けてまず乗車駅の係員が対応し、駅構内における誘導や列車への安全な乗車を支援する。降車時は待機していた降車駅の係員が安全な降車と駅を出るまでの誘導を行う。乗車駅と降車駅の係員は電話や口頭で連絡しており、降車駅の係員は紙の連絡票に詳細情報を記入して待ち受けるため、万一の連絡不備を防いだり、限られた人員で移動制約者を支援する際のサービスを向上させたりすることが課題になっているという。
新サービスは、こうした案内支援業務のプロセスを電子化し、各種情報の共有や入力、確認などをスマートデバイスで完結できるようにする。乗車駅側で、移動制約者が利用する経路(列車番号)や乗車位置、また車いすの場合は手動か電動かなどの情報を入力すると、降車駅側にプッシュ通知される。降車駅側は通知を受けてスムーズな降車を支援できるという。
サービス概要
同社は、今回のサービスのベースとなる「車いすご利用のお客さまご案内業務支援システム」を西武鉄道と開発し、2017年度にグッドデザイン賞を受賞している。ここでは対応状況に応じて画面の背景色を変更したり、新しい対応案件が入った際や到着時にアラームを鳴動したりするなどきめ細やかなユーザーインタフェースや機能を提供して、連絡不備の解消や駅係員の負担軽減を図ってきたとしている。2020年には小田急電鉄で「お客さま介助システム」として導入された。
日立は、このシステムをSaaS化することで、鉄道事業者における初期導入および運用の負荷軽減と迅速な立ち上げを支援すると説明。JR九州が6月から「JR九州あんしんサポートネット」として先行運用しているという。