日本ヒューレット・パッカード(HPE)は8月9日、「HPE GreenLake」の新たなクラウドサービスとパートナープログラムを発表した。2022年6月28~30日に米国ラスベガスで開催されたプライベートイベント「HPE Discover 2022 Las Vegas」で発表されたものになる。
米Hewlett Packard EnterpriseのGreenLake Cloud Services Commercial Business担当Executive Vice PresidentでGeneral ManagerのKeith White氏は同日開催の会見にビデオメッセージを寄せた。同氏は、最高経営責任者(CEO)のAntonio Neri氏が2019年のHPE Discoveryで「2022年末までに全てをサービスとして提供する(Everything as-a-service)」と約束したことを振り返り、「HPE GreenLakeはこの目標を達成した」と語った。当初の予定通りに同社が提供する全ての製品/サービスがHPE GreenLakeを通じてas-a-serviceモデルで提供可能になっているとした。
HPE GreenLakeの事業規模については、顧客数が6万5000社、契約総額が70億ドル超、3四半期連続での3桁受注増、900社超のパートナー、顧客定着率(Customer Retention Rate)が96%といった実績を明らかにし、順調に成長中であることをアピールした。
続いて、常務執行役員 Pointnext事業統括(兼)ストラテジック・アライアンス統括 本部長の小川光由氏は、同社が「Everything As a Service化の目標を達成」したことを踏まえて「HPE GreenLake進化の旅路は次章(Next Stage)へ」と語り、今後もさらにサービスの拡充や機能強化を図っていくとした。HPE Discover 2022では、「新しいクラウドサービス」「エコシステムの拡大」「プラットフォームの進化」の3つのテーマで発表が行われた。
新しいクラウドサービスとしては、「HPE GreenLake for Private Cloud Enterprise」「同Data Fabric」「同HCI」「同Disaster Recovery」「同Block Storage」「HPE Backup and Recovery Service」が紹介された。
Private Cloud Enterpriseは「真のクラウドエクスペリエンスを備えたプライベートクラウド」と紹介され、単一のポータルで運用管理が可能なユーザーエクスペリエンス(UX)や、ベアメタル/仮想化/コンテナーといったさまざまなワークロードに最適化されている点、マネージドサービスを標準提供し、運用管理をHPEに任せられる点などが特徴となる。
HPE GreenLake for Private Cloud Enterpriseの概要
Data Fabricは、以前から提供されている「HPE Ezmeral」を中心にさまざまなデータに対応する分析基盤として提供されるもので、分散したデータを単一のデータストアとして扱える点が特徴となる。なお、Ezmeralは同社が買収した「MapR」をベースに「Bluedata」「Scytale」「Ampool」「Determined AI」などのテクノロジーを統合したものとなっている。
また、Disaster Recoveryでは2021年7月に買収したZertoのDisaster Recovery as a Service(DRaaS)技術がベースとなっており、ランサムウェア対策などとして被害発生の直前のデータに迅速に復旧できるという。Block Storageは米国で販売が開始されており、日本国内でも「今期中に提供開始予定」だという。
エコシステムの拡大では、新パートナープログラムとして「HPE Partner Ready Vantage」の追加が発表された。従来の「HPE Partner Ready」にas a serviceビジネスの拡大支援を追加するもので、主にシステムインテグレーター(SIer)や独立系ソフトウェアベンダー(ISV)などでの利用を想定した「Build」、販売パートナー向けの「Sell」、HPE GreenLakeを活用したサービスプロバイダー向けの「Service」の3種で構成される。また、ソリューションベンダーとしてRed Hat、SUSEとの協業促進も発表された。Red Hatとの連携は日本で先行していたものがグローバルに展開された形となる。
HPE Partner Ready Vantageの概要
プラットフォームの進化については、Pointnext事業統括 GreenLakeビジネス開発本部 シニアコンサルタントの寺倉貴浩氏が説明した。「HPE GreenLake Platform」は2022年4月に国内発表されたもので、単純に言えば、これまで別々のインターフェースが提供されていた「Aruba」などのクラウドサービスを全てGreenLakeに集約し、単一のポータルで統合管理できるようにしたものだ。
これにより、同社が展開する全ての製品/サービスは、GreenLake Platformを通じてas a serviceの形で提供されるというシンプルな構造になる。今回の機能強化では、「利用者拡大に向けた必須機能を強化」した点がポイントとなり、API拡充などの開発者向け機能強化のほか、サービスプロバイダーなどでの活用を想定した「大規模環境におけるデバイス管理機能の強化」や「セキュリティ強化」などが行われたという。
HPE GreenLakeは、オンプレミスに設置するIT機器をas a serviceモデルによる課金体系で利用でき、運用管理などもクラウドと同様のユーザー体験で可能に、というコンセプトでスタートしており、当初はクラウドシフトに対するハードウェアベンダーとしての折衷案的な対応策という見方もあったように記憶している。だが、約3年を費やして全製品/サービスのas a service化を進めていく中、市場もパブリッククラウド一辺倒ではなく、ユーザーによっては一部のワークロードをパブリッククラウドから再びオンプレミスに回帰させるなどの動きも出てきている。
重要データは社外に出せないというポリシーを堅持するユーザー企業も少なくないことから、as a serviceモデルで運用可能なプライベートクラウドを提供するというGreenLakeの方針は、ハイブリッドクラウドを前提とした現在では、多くのユーザーが必要とする的を射たサービスだったように見えてきている。現状では、まだ同社のビジネスの主体は従来型の製品販売やサービス提供だというが、年率3桁成長を続けているというGreenLakeの比重も今後ますます高まっていくことは確実だという。