サーバーなどITインフラ製品のグローバル市場ではDell Technologies(以下、Dell)とHewlett Packard Enterprise(以下、HPE)が激しいトップシェア争いを繰り広げているが、この両社を追撃する勢いで同分野の事業を伸ばしているのが、Lenovoだ。果たして、強敵を追撃できるか。同社のキーパーソンにリモートで取材する機会を得たので、決意のほどを聞いた。
成長軌道に乗ったLenovoのITインフラ事業
写真1:Lenovoのエグゼクティブバイスプレジデントでインフラストラクチャソリューショングループ(ISG)プレジデントを務めるKirk Skaugen氏
キーパーソンとは、Lenovoのエグゼクティブバイスプレジデントでインフラストラクチャソリューショングループ(ISG)プレジデントを務めるKirk Skaugen(カーク・スコーゲン)氏のことだ。肩書に見るように、Lenovoの上級幹部でITインフラ事業の責任者である(写真1)。
LenovoのビジネスというとPCをはじめとしたデバイスのイメージが強いが、2014年10月にIBMのx86サーバー事業を買収してITインフラ事業に本格的に乗り出した。その後、2016年11月にIntelから移籍してきたSkaugen氏が同事業の責任者となり、ビジネスの推進体制を抜本的に刷新。さらに新たな事業戦略を打ち出し、その後もさまざまな強化を図りながら、事業としての存在感を高めてきた印象だ。
実は、筆者がSkaugen氏を取材するのは3回目になるが、今回はこれまでにも増して同氏から話を聞くことを楽しみにしていた。というのは、同氏が率いるITインフラ事業の勢いの良さが明らかに見て取れるからだ。
業績を見ると、Lenovoグループの売上高は2021年度(2022年3月期)通年で716億1800万ドル、2022年度第1四半期(2022年4〜6月)で169億5600万ドルだったが、その中でISG部門はそれぞれ、71億4000万ドル(前年度比13%増)、20億8600万ドル(前年同期比14%増)と二桁成長するとともに、全体に占める構成比を高めた。さらに、ここ3四半期連続で黒字となり、それまでの赤字体質から脱却した(図1)。
図1:Lenovo ISG部門の売上高の推移(出典:Lenovo)
こうした業績の好調ぶりは、グローバルでデジタルトランスフォーメーション(DX)が進展しつつあることが要因として挙げられるとともに、LenovoのISGに関してはSkaugen氏の手腕も大きいというのが筆者の見立てだ。同氏は「Lenovoとして今後、ITインフラ事業が重要な成長分野になるとの確信を得た」と胸を張った。
Skaugen氏がそう語る根拠がある。Lenovoが2021年9月にオンラインで開催した年次イベントの基調講演で、同社の会長 兼 最高経営責任者(CEO)であるYuanqing Yang(ヤンチン・ヤン)氏がITインフラ事業の最新の取り組みの説明に相当の時間を割き、さらに「今後は全てのビジネスがデジタルになり、全ての製品はas a Serviceとして提供される」と、エンタープライズ向けサービスを意識した発言を行ったのだ。このYang氏の発言については、本サイトでの「今週の明言」連載の2021年9月10日掲載「Lenovo CEOが語った『これからの時代を投影した明言』とは」を参照していただきたい。