自分探しから掴んだもの
ひとり情シス協会が編集した「ひとり情シス列伝」の第十章は、日本を代表する山岳にある森の中の拠点で、幼いお子さんを育てながら穏やかに暮らしている弾吾郎さんです。大手企業から中小企業を相手に、国内外を問わず、インターネットを通じて縦横無尽に駆け巡っています。
弾さんは、ソフトウェアエンジニアからキャリアをスタートさせ、海外起業や買収合併、兼業などを経て、テック系企業の社内システムエンジニア(SE)やひとり情シスを経験してきました。特殊すぎるキャリアですが、ひとり情シスとしての基本的なスタンスや兼業経験者としてのアドバイスも参考になると思います。今回は、列伝に掲載されている5つの提言の中から1つを紹介します。
提言:「全体を見下ろす目」
ひとり情シスが何かに特化するのはとても大事です。しかし、それしかやらないとなると、そのスキルが通用しなくなる時期はすぐに訪れると思います。一部だけを見るよりも全体を見る方が面白いし、将来的に役立つことの宝庫です。
あるサービス全体を一通り触ったり作ったりできるようになると、周囲から相談されることが多くなりますが、基本的にどのようなことでも対応できるようになります。すぐに対応できなくても、解法のテクニックは身についているので何とかなります。
プログラムだけだと開発のみになりますが、情シスを経験するともう少し広い意味でITに触れることができます。その結果、視野が広くなったのは良かったとは思います。最近は、今までに経験のない顧客の支援をしていますが、今までの経験で新しい取り組みにも十分に対応できています。
私自身、現在は森の中で場所を選ばず仕事をしています。そして独立し、会社を作りました。いわゆる「ひとり会社」です。会社設立に関して、何から何まで自分でしましたし、最新のITを活用しています。昨今はコロナ禍で起業数が増えており、私のところにも会社を立ち上げたいという相談が多くあります。
会社を設立するといろいろとやることが出てきます。バラバラのタスクが連続的に出てきます。会社のウェブページやメールシステムなどの環境構築が必要ですし、会計に人事、労務などの管理もやらなければなりません。しかし、昨今は多くのシステムが連携するようにできているので、全部面倒を見てもらえるようなサービスが好まれる時代になっているような気がします。
本業にしても副業にしても、重要なのは全体を見下ろすことです。これは人生を通して、長い間仕事をしていくにはとても重要なことです。ひとり情シスは、このような能力を養うドリルとしてとても有効ですし、この仕事を通して自分の本来の潜在的な能力を引き出すこともできると思います。
- 清水博(しみず・ひろし)
- 一般社団法人 ひとり情シス協会
- 早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。横河ヒューレット・パッカード入社後、日本ヒューレット・パッカードに約20年間在籍し、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス)におけるセールス&マーケティング業務に携わり、米ヒューレット・パッカード・アジア太平洋本部のディレクターを歴任、ビジネスPC事業本部長。2015年にデルに入社。上席執行役員。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手掛けた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。中堅企業をターゲットにしたビジネスを倍増させ世界トップの部門となる。アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。2020年定年退職後、会社代表、社団法人代表理事、企業顧問、大学・ビジネススクールでの講師などに従事。「ひとり情シス」(東洋経済新報社)、「ひとり情シス列伝」(ひとり情シス協会出版)の著書のほか、ひとり情シス、デジタルトランスフォーメーション関連記事の連載多数。産学連携として、近畿大学CIO養成講座、関西学院大学ミニMBAコース、大阪府工業協会ひとり情シス大学1日コースを主宰。