日本マイクロソフトが明かした行政機関へのDX支援実態

阿久津良和

2022-09-30 06:00

 日本マイクロソフトは9月29日、国際協力機構(JICA)と締結した包括連携協定(8月31日発表)の概要や、官公庁・文教などを対象とするパブリックセクター事業の取り組みに関する説明会を開催した。執行役員 常務 パブリックセクター事業本部長の佐藤亮太氏は、「デジタルトランスフォーメーション(DX)推進と人材育成を必要とする組織の『黒子』」に徹すると同社の姿勢を語った。

日本マイクロソフト 執行役員 常務 パブリックセクター事業本部長の佐藤亮太氏
日本マイクロソフト 執行役員 常務 パブリックセクター事業本部長の佐藤亮太氏

 日本マイクロソフトの公共部門は、「パブリックセクター事業本部」を筆頭に、政府・官公庁・自治体を対象とする「デジタル・ガバメント統括本部」、教育機関を対象とする「文教営業統括本部」、病院や製薬企業を対象とする「医療・製薬営業統括本部」の3部門で構成される。

今回の説明会で同社が焦点を当てたのは、デジタル・ガバメント統括本部だ。同部門の活動は国内でも幅広く、例えば文部科学省では「Microsoft 365 E5」および「Microsoft Azure」を全職員に展開し、利便性の向上を目指している。約2万人の職員を数える農林水産省もMicrosoftのソリューションを導入して、本省と農政局本局、51地方組織間の三者による調整時間を5割削減し、各部局のビジネスプロセスの再構築(BPR)担当を部局横断型で構成した。業務の相談窓口を開設し、職員からの相談時間を50分から5分に短縮した。また、各課に点在する資料ファイルをクラウドで共同作業可能したところ作業時間が約7割削減された。

 防衛省・海上自衛隊もIT人材を育成するため、日本マイクロソフトで約1年間の研修を受けている。Microsoftは世界各国でセキュリティや人工知能(AI)、IoT分野の最新技術トレーニングを提供しているが、海上自衛隊は同様のプログラムを受講した形だ。

 自治体レベルでも、7月に東京都中野区、9月には大阪府堺市と協定を締結。業務執行役員 パブリックセクター事業本部 デジタル・ガバメント統括本部長の木村靖氏は、「デジタルで行政の基盤を作る大きな推進力が動いている」と述べた。こうした動きは、総務省が提唱する「自治体情報システムの標準化」や、デジタル庁の「地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化」が後押しとなっているのだろう。

JICAのDXビジョン
JICAのDXビジョン

 JICAとの包括連携では、Microsoftのクラウドサービスの提供のみならず、人材育成の枠にまで広がる。JICA 最高デジタル責任者の新井和久氏は、「当初はMicrosoft製品を十分に使いこなせておらず、もったいないことに気づいた。使いこなすことで私たちの足腰を強くしたいと考えている」と連携の理由を述べ、DXの推進では「人を変えるのが一番難しい。ただ、そこを動かせば何とかなる」と意気込みを語り、日本マイクロソフトの包括的な支援が必要だと説明した。

 日本マイクロソフトの木村氏も、「人材育成はプログラム化し、意思決定層向けと現場向けを同時並行で走らせている。なぜなら、意思決定層自身が意識改革しないと『今までのままでよい』となってしまう。(現場に対しても改善の)マインドセットに変えてもらうため、アイデアソンやハッカソンを開催して、業務内容から改善のアイデアを一つにまとめていく」とした。

JICA 最高デジタル責任者の新井和久氏(左)と日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 デジタルガバメント統括本部長の木村靖氏
JICA 最高デジタル責任者の新井和久氏(左)と日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 デジタルガバメント統括本部長の木村靖氏

 今後の取り組みについて木村氏は、デジタル庁にMicrosoftとの連携や「グローバルの知見を生かしながら」コミットメントを継続すると説明。さらに、データ主権が重要だとし、官公庁・自治体へのデジタル化支援を継続。「組織変革や文化変革、人材育成にも愚直に取り組み、当社の貢献度を高めていく」(木村氏)という。

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