本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス リードの磯貝友紀氏と、NEC マネージドサービス事業部門長の上坂利文氏の発言を紹介する。
「企業にとってサステナビリティーの推進は自らのビジネス基盤を守っていくことだ」
(PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス リードの磯貝友紀氏)
PwC Japanグループ サステナビリティ・センター・オブ・エクセレンス リードの磯貝友紀氏
PwC Japanグループ(以下、PwC)は先頃、「サステナビリティに関する消費者調査結果と考察」と題した記者説明会をオンラインで開いた。磯貝氏の冒頭の発言はその会見で、企業にとってサステナビリティー(持続可能性)を推進することの意味について語ったものである。
PwCがこの日発表した「サステナビリティに関する消費者調査2022」の内容については公開資料をご覧いただくとして、ここでは磯貝氏が説明した「PwCが考えるサステナビリティー」の内容に注目したい。
磯貝氏はサステナビリティーについて、「基本的な考え方として、環境価値、社会価値、経済価値の3つを並び立たせることが命題となるが、それをビジネスの視点から考えてみると“親亀・子亀・孫亀の構造”と言える」と述べた。図1の右側に描かれているのが、その亀の構造である。その上で次のように説明した。
「企業にとって経済価値は密接に関わるが、環境価値や社会価値についてはこれまで間接的に関わってきたイメージがあった。それがここにきてサステナビリティーの重要度が高まってきたことで、この3つの価値は亀の構造になっているとの認識が広がりつつある」
図1:サステナビリティーの捉え方(出典:PwC Japanグループの会見資料)
さらに、こう続けた。
「最も重要なのは、親亀が環境価値、子亀が社会価値、孫亀が経済価値という構造なので『親亀がこけたら皆こけてしまう』ことだ。それに多くの人が気付いた。先に述べたように、この亀の構造はビジネスの視点で考えると、すなわち、企業にとってサステナビリティーを推進するというのは、自らのビジネス基盤を守っていくことになる」
冒頭の発言はこのコメントの最後の部分から抜粋したものだ。企業にとっては、この亀の構造が自らのビジネス基盤そのものと考えるべきだと。ただ、磯貝氏は次のような見方も示した。
「とはいえ、実際のところ、環境価値や社会価値を生み出しながら経済価値、すなわちビジネスを成長させていくのには企業にとって大変な労力が必要だ。そこで、これからは企業もそうしたサステナビリティーの取り組みを消費者に広く認知してもらう活動を積極的に進め、消費者にも協力してもらえる環境づくりに努めていくことが大事になってくるだろう」
今回、PwCがサステナビリティーをテーマにした消費者調査を実施したのは、こうした背景があるという。
ちなみに、図1に記されている説明文では「トレードオン」という言葉をキーワードにしたサステナビリティーの捉え方を示している。上記で紹介した磯貝氏の発言とは文面として異なるが、亀の構造をベースに訴求したいポイントは同じことを述べている。こちらも興味深い説明文なのでご一読いただきたい。
サステナビリティーについて理解を深めることができたと感じた磯貝氏の話だった。