経営を取り巻く環境が大きく変化する中で、自らのパーパス(存在意義)を明確にしてそれを基に変革を進めようという企業が増えている。だが、本当に変革したいのならば、存在意義もさることながら「存在しなくなれば社会にどんな影響があるのか」について突き詰めるべきではないか。今回は、企業変革に向けたパーパス策定の在り方について問題提起したい。
ネットワンシステムズが突き詰めたパーパスの核心とは
写真1:ネットワンシステムズ 代表取締役 社長執行役員の竹下隆史氏
こうしたパーパス策定の在り方について記事に取り上げておきたいと思ったのは、大手ネットワークインテグレーターのネットワンシステムズが先頃、今後の事業戦略について記者説明会(速報記事参照)を開き、代表取締役 社長執行役員の竹下隆史氏が「パーパス経営で変わるネットワンの未来」と題した話の中でまさしくこの点を指摘していたからだ(写真1)。
同社は2022年4月、「人とネットワークの持つ可能性を解き放ち、伝統と革新で、豊かな未来を創る」をパーパスとし、新たな企業理念体系として、存在意義を示す「Purpose(志、大義)」、社会に対して貢献できる具体的な「Mission(使命)」、具体的な目標および道筋となる「Vision(目標)」、決して踏み外してはならない「Values(価値観)」、そして社員一人一人の考え方や判断の基準となる「WAY(行動指針)」を策定した(図1)。
図1:企業理念体系の概要(出典:ネットワンシステムズの会見資料)
竹下氏はパーパスについて、「全社員がこれまで感じていた当社の根本的な部分について明確に言語化することで、より強固な道しるべとしての役割を果たすと考えている」と説明。企業理念体系については「経営判断や事業活動、社員一人一人の在り方に至るまで、自らの姿勢を常に確認する拠り所として、これらをパーパス経営の軸として機能するように設計した」と語った。
また、「パーパスを軸とした企業理念体系の策定に当たっては、社員の思いを具現化するためにさまざまな議論を行った。特にパーパスについては『当社が存在しなくなれば社会にどんな影響があるのか』という議論からスタートし、設立時の事業計画書までさかのぼって当社の強みや価値を深く見つめ直して策定した」と振り返った。
その上で、同氏は次のように述べた。
「とはいえ、これらのことを策定しただけでは意味がなく、いかにして社員一人一人が自分事として理解し、行動を起こしていけるかが重要だ。そのためにも浸透活動が非常に大事であり、当社もさまざまな取り組みを実施している。中でも最も大事なのは、経営トップが社員との対話の時間をできるだけ設けることだと考えている。そうしたトップダウンと、ボトムアップの施策を両輪で実施することが浸透活動では重要だ」(図2)
図2:企業理念体系の浸透活動の概要(出典:ネットワンシステムズの会見資料)
さらに、こう続けた。
「今、多くの企業がパーパス経営に取り組んでいるが、当社の経験値がそうした企業のお役に立てるように、これからもさまざまな活動を実施し、その内容を積極的に情報公開していきたい」