本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、SAS Institute EVP 兼 CTOのBryan Harris氏と、テラスカイ 代表取締役社長の佐藤秀哉氏の発言を紹介する。
「大量データの活用に向けて人間の考察と意思決定のスケーラビリティーが必要だ」
(SAS Institute EVP 兼 CTOのBryan Harris氏)
SAS Institute EVP 兼 CTOのBryan Harris氏
SAS Institute Japanは10月21日、ユーザー企業向けにアナリティクスや人工知能(AI)の最新動向や活用事例を紹介する自社イベント「SAS INNOVATE」を都内ホテルで開催した。冒頭の発言は、この機に来日して同イベントで基調講演およびメディアラウンドテーブルを行ったSAS Institute(以下、SAS) EVP(エグゼクティブバイスプレジデント) 兼 CTO(最高技術責任者)のBryan Harris(ブライアン・ハリス)氏が、独特の言い回しでアナリティクスの必要性を説いたものである。
Harris氏の基調講演のテーマは「Move the World Forward」。アナリティクスの力で世界を前進させたいという思いを込めたものだという。同氏の講演でのスピーチから、興味深く感じた内容を以下に紹介しよう。
「私たちの周りは今、デジタル社会の進展に伴って大量のデータに溢れている。これらをうまく活用していくには、人間の考察と意思決定のスケーラビリティーが必要だ。それを手に入れるにはどうすればよいか。答えはアナリティクスに精通し、フル活用することにある。人間の今後の成長ドライバーはまさしくそこにある。逆に、データをうまく活用できなければ、これから起こり得るさまざまな競争に打ち勝つことはできない」
こう語った上で、同氏は「企業がデータ活用で成功するための3つのステップ」を次のように説明した。
第1ステップは、「アナリティクス・パートナーとの提携」だ。「最良のパートナーとの提携によって、クラウドとAIを活用したアナリティクスを手に入れることが肝要だ」という。つまりは、そのためにSASをパートナーに選ぶべきだという話だが。
第2ステップは、「永続的なデータ&アナリティクス戦略の実行」だ。「データ&アナリティクス戦略を永続的に粘り強く実行し、戦略のスコープを広げていくことが重要」とのことだ。
第3ステップは、「意思決定の規模を拡大」だ。「アナリティクスによる意思決定の手法を社内でどんどん広め、会社全体としてインテリジェンスの度合いを高めていく」という意味だ(表1)。
表1:企業がデータ活用で成功するための3つのステップ(出典:「SAS INNOVATE」提示資料)
とはいえ、多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む中で、アナリティクスは必須のツールであることから、今や最も激戦市場になりつつある。そうした中で、SASのアナリティクスは今後も確固たる存在感を発揮し続けることができるのか。基調講演後に行われたメディアラウンドテーブルで単刀直入に聞いてみた。すると、Harris氏は次のように答えた。
「SASはこれまで長年にわたって、アナリティクス分野でイノベーションを起こし続けてきた。そうした経緯があって、今では幅広い業種で多くのお客さまにしっかりと使い込まれており、それらのノウハウも蓄積され、活用されている。さらに、技術的にはAIや機械学習(ML)を早くから取り込み、最近ではクラウド利用にも柔軟に対応している。確かに新しい競合製品が出てきているが、SASが培ってきたアナリティクスの“厚み”は比類のないものだと自負している」
CTOの立場としては最も訴求したいポイントだろう。回答の熱弁ぶりが印象的だった。