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海外コメンタリー

もはや知性はAIのゴールではなくなったのか

Tiernan Ray (Special to ZDNet.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2022-11-11 06:30

 英国の数学者であるAlan Turing氏は1950年に、「『機械は考えることができるか』という問いについて考えてみることを提案する」と書いた。同氏の問い掛けは、その後数十年間にわたって、人工知能(AI)研究の議論の枠組みとして機能してきた。

人間の形をしたAIのイラスト
提供:Tiernan Ray/ZDNET

 AIについて議論してきた数世代の科学者にとって、AIが「本物の」(あるいは「人間の」)知性を実現できるかどうかという問いは、常に重要な要素だった。

 しかし現在のAIは、多くの人にとってその問いが問題ではなくなるという転換点を迎えているかもしれない。

 近年になって産業用AIと呼ばれるものが登場したことは、そのような高尚な問題意識の終わりを示している可能性がある。計算機科学者のJohn McCarthy氏が「AI」という用語を生み出してから66年が経ち、現在のAIが持つ機能は、これまでになく高度になっている。その結果、AIの産業化が起こり、議論の焦点が、AIの知性からAIがもたらす成果へと移ってきた。

 AIは目覚ましい成果を挙げている。Alphabet傘下のDeepMindが開発したタンパク質の折り畳み予測システム「AlphaFold」や、非営利のAI研究団体OpenAIが作ったテキスト生成プログラムである「GPT-3」がその例だ。これらを知性と呼ぶかどうかはともかく、これらのプログラムには、産業面で大きな期待がかけられている。

 中でもAlphaFoldは、新しい形のタンパク質を設計できる可能性があることで、生物学の世界に衝撃を与えている。またGPT-3は、人手を介さずに従業員や顧客からの問い合わせに書面で回答するといった業務を自動化できるシステムとして、急速に立ち位置を確立しつつある。

 チップメーカーのNVIDIAをはじめとする半導体業界がけん引している実用面での成功は、古くからある知性に対するこだわりをかすませているように見える。

 産業用AIの世界には、プログラムが知性を獲得できるかを気にしている人などほとんどいない。明らかな価値を発揮する実用的な成果の前では、「それは知性なのか」という古くからある問いは無意味になっているかのようだ。

 計算機科学者のHector J. Levesque氏は、AIの科学と技術では、「残念ながら注目を集めているのはAIの技術の方だ」と述べている

 確かに一部の学究の徒にとっては、真の知性に関する問いはいまだに重要な問題であり続けている。米ZDNetは先ごろ、この問題に強い関心を持っている、2人の著名な研究者にインタビューした。

 その1人は、「Facebook」の運営元Meta PlatformsのチーフAIサイエンティスト、Yann LeCun氏だ。同氏は、自身が6月に発表した、AIが今後目指すべき方向に関する論文について詳しく話してくれた。LeCun氏は、現在主流となっている深層学習について懸念を持っている。現在の路線で深層学習を追求していくと、同氏が「真の」知性と呼んでいるものは実現できない可能性があるという。これには、コンピューターが常識に基づいた行動を計画する能力などが含まれる。

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