旅行運輸大手のTUIで分析およびAI担当最高情報責任者(CIO)を務めるMarc Jennings氏によると、2023年に注目すべき重要なテクノロジートレンドは没入型技術だという。
仮想現実(VR)や拡張現実(AR)のヘッドセットといったハードウェアのコストが下がりつつある中で、メタバースを最大限に活用する方法を検討し始める企業が増えていく、とJennings氏は述べた。
Jennings氏も他の業界専門家たちと同様の見解で、Mark Zuckerberg氏のMetaをはじめとする大手ITベンダーが没入型体験に大きく賭けているため、この技術が程なくして大いに勢いづくとみている。「世界がその方向に進んでいることは明白だ」(Jennings氏)
コンサルティング企業McKinseyは、メタバースが消費者向けと企業向けのユースケースで2030年までに生み出す金額を最大5兆ドルと試算する。同社はまた、平均的なインターネットユーザーの1日あたりのメタバース体験が2030年までに最大6時間になると予測している。
こうした数字は、現時点では信じがたいものかもしれない。何と言っても、一般の人々が仮想現実や拡張現実などの主要メタバース技術に関心を寄せるまでには、あるいは受け入れるまでには、まだまだ長い時間がかかるからだ。
しかし、一部の企業は2020年代の終わりまで待つのではなく、メタバースの技術を自社のユースケースに応用する方法をすでに検討している。
「それらの技術によって自社の業務をどのようにサポートできる可能性があるか、考えてみるといいだろう」とJennings氏。「職場のどの部分で価値を高められるか、どのような種類の機能やサービスに適しているかを考えてほしい」
Jennings氏によると、TUIはすでに多数のイニシアチブを進めており、メタバースを使用して社内の同僚や社外の顧客の体験をより豊かなものにする方法について、理解を深めているという。
「現時点では、非常に控えめな取り組みだ。この分野に投じる資金は莫大な額になる可能性がある。まだ初期の段階だが、TUIが必要だと考えるタイプのイノベーションだ」と同氏は語る。
Jennings氏のデータチームやIT部門の同僚、その他の従業員は、TUIとその顧客に短中期的に影響しそうな主要テクノロジートレンドに常に関心を向けているという。
没入型体験を探求する取り組みの狙いは、次の10年間での変化が見込まれるエンドユーザーの要件を把握することだ。こうした探求は、そう遠くない将来にどのような種類の機能が必要になりそうかを把握する助けとなる。
「メタバースが当たり前のものになるなら、それらのスキルを身に付けておく必要がある。これは新しいスキルセットであり、現在のビジネスにおける多くのスキルとは全くの別物だ。では、その要件を理解し、メタバースが本当の意味で爆発的に拡大する前に活用する準備を整えるには、どうすればいいだろうか」
TUIは、スタッフが社内で使用するアプリケーションに応用される産業用メタバースと、社外の顧客向け体験の両方で、潜在的なユースケースの理解を深めようと努めている、とJennings氏は述べた。
産業用ユースケースに関して言えば、没入型技術がマッスルメモリーの開発に非常に有効であることが、初期の調査で明らかになっている。同氏は航空機パイロットの訓練を例に挙げた。