アドビは11月30日、同社が実施した日本におけるPDFファイルの利用状況や認識に関する実態調査の結果を発表した。これによると、PDFファイルの利用機会が増加している一方、ユーザーにおけるセキュリティ面での認識が不十分だと分かったという。
同調査は2022年10月21~26日、全国のビジネスパーソン600人を対象にインターネットで実施された。回答者は、仕事でデスクワークを主としており、月に1回以上PDFファイルを扱っていると回答した20~59歳で、性別と年代ごとに75人ずつ割り振っているという。
同調査では、コロナ禍前後でのPDFファイルの利用頻度について質問したところ、「以前よりも大幅に増えた」が15.0%、「どちらかというと以前よりも増えた」が32.3%で、合わせて47.3%がPDFファイルの扱いが増えたと回答した。
PDFファイルに対するイメージを聞くと、「レイアウトが崩れない」が45.3%と最も多く、「編集ができない」が44.2%と続いた(実際には可能)。一方、「電子署名/契約に使える」というイメージは8.7%にとどまった。
PDFファイルに関して、普段利用している機能について質問したところ、「変換機能(『Excel』や『Word』、『PowerPoint』などをPDFに変換する機能)」が57.8%と最も多かった。次いで、「コメント、ノート注釈、ハイライト、スタンプの追加」が32.7%、「ファイルの結合、分割、削除、回転、並べ替え」が31.5%と、3割以上が利用していた。一方、知らなかった機能は「比較機能(2つのPDFファイルを比較し、相違点や差分を確認する機能)」が35.0%と最も多く、「クラウド共有機能」が29.2%と続いた(図1)。
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運営元が不確かな無料のオンラインサービスを使って、ビジネス資料をPDF化・編集したことがあるかを聞いたところ、20代においては半数以上、全体では37.2%が「ある」と回答した。また、PDFファイルの作成に使用するツールによって、体裁やフォントの再現性、長期の閲覧性に影響が出ることを「知っていた」とする回答者は33.8%にとどまった。
「機密性の高い文書をPDF化する際、パスワード設定や権限設定を行っているか」という質問では、全体では「頻繁に利用している」が20.3%、「時々利用している」が35.0%で、合計の利用率は55.3%だった。年代別で見ると、20~30代では利用率がそれぞれ72.6%、59.3%と平均より高かった(図2)。
一方、全体の25.7%、4人に1人以上に当たる回答者がパスワード設定や権限設定を「全く利用していない」と分かった。また、PDF化した後でも設定次第では第三者が後から加工・修正できること、個人情報の漏えいにつながる危険性について認識があるかを聞いたところ、全体の64.3%が「知らなかった」と回答し、適切な設定をしないことによるセキュリティリスクが浮き彫りになったという。
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今回の調査結果を受け、アドビ マーケティング本部デジタルメディア ビジネスマーケティング執行役員の竹嶋拓也氏は「今回の調査でPDFファイルの利用増加が見られる通り、デジタルツールの普及は急速に進んでいる。『Adobe Acrobat』では前年比で半数以上のPDFがモバイルやウェブで開かれ、過去1年間で数億ものファイルが共有されている。また、年間で数兆ものPDFが作成されるなど、PDFをベースとした共同作業が加速している。しかし、PDFがオープンスタンダードとなり普及した一方で、国際規格に準拠していなかったり、権限設定に不備があるPDFが数多く作られたりして、セキュリティリスクの増加といったトラブルが発生しているのも事実である」とコメントしている。
「こうした中で、企業が最適なツールを導入して基盤を整え、ビジネスパーソンが正しいITリテラシーを身に付けて文書管理を行うことが、喫緊の課題である。アドビは約30年前にデジタルドキュメントというカテゴリーを創出し、それ以来機密文書の保護やツールを活用したコラボレーションの促進など、利用者のニーズに基づいてPDFをベースとした革新を提供してきたが、これを継続することがアドビのDNAに刻まれた使命である」(竹嶋氏)