先頃の巨大テクノロジー企業の株価下落は、デジタル成長の黄金時代が終焉を迎えつつある兆候だと主張する人もいる。
だが、Nash Squaredの最高経営責任者(CEO)であるBev White氏は、投資家がメタバースなどの誇張されたトレンドの見通しに不安を感じているとしても、テクノロジー支出への注力は依然として経営者の最優先事項だと語る。
「この変化の波が後退することはないだろう」とWhite氏。「変化はすでに始まっており、人々はそれを受け入れている。デジタルリーダーは今後、事業運営のあり方を絶えず変えていく必要がある」
同氏の見解の根拠となっているのは、Nash Squaredの「Digital Leadership Report」だ。1800人のデジタルリーダーを対象に、同人材紹介会社とCIONETが共同で実施したこの年次調査のでは、世界のテクノロジー支出がこの15年以上の間で3番目に速いペースで成長する見通しだとされている。
回答者の87%が景気後退を予想しているものの、デジタルリーダーの半数以上(52%)が2023年中にテクノロジー予算が増加すると見込んでいる。
White氏がこの増加の要因として指摘するのは、過去2年間のデジタルトランスフォーメーションプロジェクトによって経営陣がテクノロジーに関心を持つようになった点だ。
企業は新型コロナウイルス感染症のパンデミックを受けて、テクノロジーを活用した事業運営の見直しを迫られた。これには、プロセスのクラウド移行や、顧客との効果的な対話を支援する新しいデジタルプラットフォームの作成などがある。
しかし、経営陣が全面デジタル化に関心を持っているのは、近年のめざましい成果だけが理由ではない。White氏によると、企業がパンデミック後の時代にテクノロジーへの投資を続けるのは、次に来るものへの対処にテクノロジーが役立つと考えているからだという。
つまり、デジタルリーダーは、オンデマンドITやデータ分析、自動化など、テクノロジーへの投資によって、すでに極めて厳しくなっているビジネス環境に対処しやすくなると考えているということだ。
これはGartnerの2023年のテクノロジー予測にも表れている。同社によると、経済の混乱期に財務状況の強化を目指すデジタルリーダーは、デジタルトランスフォーメーションを加速し続ける一方で、新しい形のオペレーショナルエクセレンスに目を向ける必要があるという。
経営陣は、世界規模の巨大なマクロ経済的圧力を受けて、顧客に近づく方法、成長を促進する方法、事業コストを削減する可能性のある方法について、はるかに慎重に考えるようになっている、とWhite氏は述べた。
同氏はサプライチェーンに対する圧力にも言及した。最初はパンデミックによって、次にロシアのウクライナ侵攻によって引き起こされたサプライチェーンの混乱を目の当たりにした経営陣は、需要と供給の変動に柔軟に対応する手段を求めるようになっている。
こうした課題の解決策の多くは、テクノロジーによってもたらされる可能性が高いとWhite氏は述べた。多くの企業において、その対応はクラウドコンピューティングへの継続的な投資から始まるだろう。
このようにオンデマンドITが重視されていることは、意外に思えるかもしれない。10年かそれ以上にわたってITの課題に取り組み、パンデミックのために対象を絞った投資を数年続けた後では、クラウドコンピューティングへの移行を過去の話と考えるのも無理からぬことだ。