Dell Technologies(以下、Dell)の日本法人デル・テクノロジーズ(以下、デル)は12月6日、新たなサービス事業である「Dell APEX」(以下、APEX)について、来日したDell幹部による記者説明会を開いた。全製品を対象に従来のフロー型からストック型へのビジネスモデルの転換を図ろうという取り組みだが、移行する際に業績が落ち込むリスクをはらむ。この動き、果たしてDellの本気度やいかに。
APEXでビジネスモデルの大転換に挑むDell
筆者は2022年10月20日掲載の本連載で「フロー型からストック型へのビジネスモデル転換に向けたDellとHPEの深謀遠慮」と題した記事を書いたが、今回はその続編のつもりで、Dell幹部の会見を機に同社の「本気度」について探ってみた。
上記の記事から、要点をおさらいしておこう。
「APEX(エーペックス)」とは、Dellが全ての製品をアズ・ア・サービスとして、ユーザーの利用に応じた継続課金の形で提供するサービス事業のことだ。
同社がAPEXの提供に乗り出したのは、今後、ITリソースの使用状況に応じた継続課金によるサービスの提供形態が、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドの利用が広がっていく中で、クラウドサービスと同様の扱いを求めるユーザーニーズが高まると想定されるからだ。そのため、同社はAPEXをハイブリッドクラウドやマルチクラウド、さらにはデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けたソリューションとして大きくアピールしている(図1)。

図1:APEXの特徴(出典:デル・テクノロジーズの会見資料)
筆者がこのAPEXに注目しているのは、Dellにとってビジネスモデルの転換につながる話だからだ。これまでの同社のビジネスモデルは製品の売り切りによって収益を上げるフロー型が中心だが、APEXは収益を継続的に得るストック型に転換しようというものだ。ストック型のほうが安定した収益を上げられるようになるが、フロー型から移行すると販売時に一括した収益が上がらないため、業績が落ち込む可能性がある。さらに、移行したストック型ビジネスが伸びないと業績もそのまま低迷することになりかねない。
したがって、フロー型からストック型へのビジネスモデルの転換が想定より速く進むのは避けたいのが本音だろう。その想定というのは、すなわち業績の落ち込みを最小限にとどめるために必要な時間だ。
これに対し、先述の記事では、Dell幹部による「APEXへの移行で業績が落ち込む可能性があるのは織り込み済み。APEXは順調な立ち上がりを見せており、スムーズに移行していけると確信している」との発言を紹介。全ての製品がAPEXの対象になる時期については、「数年先になる。対象となった製品は順次公表していく」と回答。さらに、DellのビジネスにおけるAPEXの位置付けについて「製品の提供形態における新たな選択肢」と説明した。