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GitHubドムケCEOが考えるAI活用:「オープンソースの変遷同様に課題は解決できる」

河部恭紀 (編集部)

2022-12-12 07:30

 GitHubの最高経営責任者(CEO)を務めるThomas Dohmke氏は、同社日本法人であるギットハブ・ジャパンが開催した事業説明会で登壇した。ここでは、同職就任後初来日となった同氏に、GitHubがMicrosoft傘下になってからの変化や人工知能(AI)を使ったペアプログラミングシステムが与える影響などついて聞いた。その一部を編集して掲載する。

--CEOに就任されて1年、GitHubがMicrosoft傘下になって4年がそれぞれ経過しています。その間に起きた変化を教えてください。

 私がMicrosoftに入社したのは8年前で、その4年後の2018年にMicrosoftはGitHubを買収しました。その際、私はディールリードを務めました。

Thomas Dohmke氏
Thomas Dohmke氏

 GitHub買収については、基本方針が3つありました。開発者ファーストを常とすること。GitHubのビジネスを加速させるのにMicrosoftを活用すること。Microsoftのビジネスを加速させるのにGitHubを役立てることです。

 この4年、あるいはCEOとしての1年を振り返ってみると、開発者ファーストの姿勢は保たれ、より強くなっているといえるでしょう。

 MicrosoftによるGitHubビジネスの加速については、Microsoftの技術に基づいた「GitHub Actions」のような製品を公開してきました。「Azure AI」プラットフォームや「Azure」データセンターのGPUを活用する「GitHub Copilot」も提供しています。その一方で、GitHubは、Actionsや「GitHub Codespaces」、Copilotのような製品により、Microsoftにも利益をもたらしています。

 このことについて誇りに思うのは、GitHubが独立性を保ちながら成し遂げたことです。GitHubは、Microsoftだけでなく、Microsoftと競合する企業とも仕事をしています。GitHubは、中立性を保ちながらも、自社とMicrosoftのビジネスを加速させることができました。

--年間経常収益(ARR)が10億ドルに達したとの話が事業説明会でありましたが、GitHubの中立的な立場は、その一因になっていますか。

 その通りです。会社としてはバランスが重要だと考えています。GitHubは、“オープンソースの本拠地”と言われていますが、クラウドにおいて中立な立場を取り、あらゆるオープンソースプロジェクトをGitHub上で可能にするよう技術的にも中立性を保つことが期待されています。その一方で、規模の大小に関わらず世界中の企業に製品を提供するエンタープライズビジネス企業でもあります。

--他に要因はありますか。

 GitHubをユニークな存在にしているものとして、ブランドがあります。GitHubは、業界全体でよく知られ、愛されているブランドです。私が街を歩いていると、パーカーにあるロゴに気づく人がいます。15年を経てもこれほどまでに愛され、称賛されるブランドは、開発分野において他にはないのではないでしょうか。

--ブランドイメージについてですが、GitHubと言うとまず頭に浮かぶのは「コードリポジトリー」だと思います。しかし、現在では、開発者向けツールを提供する企業になっています。この変化は、MicrosoftでGitHub買収を主導されていた時から考えられていたものなのでしょうか。それとも、この4年間にビジネスを進める中で出てきたアイデアなのでしょうか。

 社内で買収を提案した際、GitHubを次のレベルに持っていくというのが計画でした。GitHubが2018年に持っていた機能をDevOpsという方向に拡大し、オープンソースプロジェクトとエンタープライズ企業の両方が別の場所に移動することなく、自社のリポジトリーでより多くの作業ができるようにするというものでした。

 アイデアの多くは時間とともに進化します。この4年間で私たちは、2018年には持ち得なかったアイデアを多く生み出しました。2018年には、「GPT-3」のような高性能な言語モデルを搭載したAIが手に入り、「Codex」を使うことで強力な機能が提供可能になるとは考えもしませんでした。つまり、DevOpsプラットフォームへの拡張という当初の考えと、この4年間で得たアイデアが合わさったものだと言えます。戦略は常に進化し続けているということです。

 GitHubは、「Ruby」のようなプログラミング言語や「Visual Studio Code」のようなエディターなどと同様に、大規模な開発者エコシステムの一部です。そのため、事業説明会で話した4つの柱に関わるコアなユーザー体験を高めることにも注力しています。

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