「ひとり情シス」の本当のところ

「ひとり情シス大学1日コース」開講報告(2)--ひとり情シス協会の認定インストラクター - (page 2)

清水博 (ひとり情シス協会)

2023-01-11 07:00

講師選定の難しさ

 今回の講座で取り上げた内容を技術的に解説できるIT人材はそれなりにいると思います。しかし、ひとり情シスを実際に経験した人や現役の人でなければ、コロナ禍後やデジタル対応に直面している現在のIT担当者の悩みや苦労は分からないものです。またひとり情シスにもさまざまなタイプがあり、外部のITベンダーにほとんどの業務を任せるタイプや、社内のIT活用レベルが低くPCのサポートがメインのタイプ、プログラミングが得意/不得意なタイプもあります。

 ひとり情シスはIT予算が十分にないことが多いので、まずは自らが手を動かして対処する必要があります。次に、社内外でのコミュニケーションやシステム導入などに必要なリーダーシップといったヒューマンスキルが求められます。そして、それらを講義するためには高度な言語化能力も必要です。つまり、講師を務める人材には、バランスの良いスキルセットが求められます。また講師をするに当たっては、受講者がちゃんと内容を理解できているか適宜確認し、場合に応じて声掛けすることも必要です。さらに休憩時に気軽に声をかけられる親しみやすさも兼ね備えていると望ましいです。

 今回講師を務めたのは、ひとり情シス列伝の第1章に登場した「カイゼン型ひとり情シス」の増山大輔さんです。ひとり情シス協会の認定インストラクターで、製造業の現役ひとり情シスです。従業員数が200人規模というひとり情シスがとても多い環境で勤務されています。増山さんは従業員数が40人から200人へと成長する過程を経験しています。つまり、ほとんどの受講者が所属する企業の規模を経験していて、それぞれの目線で話ができるため、今回の講座に最適な人材といえるでしょう。増山さんが実際に運用しているシステムやその構成図を解説した際には、選定時の助言などを求めて質問が止みませんでした。

認定インストラクターでカイゼン型ひとり情シスの増山大輔さん
認定インストラクターでカイゼン型ひとり情シスの増山大輔さん

 増山さんは大学時代にオーケストラでコンサートマスターをした経験があります。「マネジメントの父」と呼ばれるPeter Druckerも企業経営とオーケストラの密接な関係性について述べていますが、コンサートマスターは第2の指揮者といえるポジションです。その経験からか、増山さんは受講者全体の注意を一瞬で引きつけ、質問に対しても相手が納得できるように何度も説明していました。この何気ない振る舞いこそが社内の情シスとして一番重要なスキルセットであることを、受講者の方々も感じてくれたことと思います。

 日本全国には、ひとり情シスのインストラクターになれる方が数多くいると思います。従業員数300人以下の中小企業に勤める経験豊富な現役のひとり情シスで、講師に興味のある方のご連絡をお待ちしています。今後も、中堅中小企業のIT担当者向けの講座は必要性が増していきます。講座内容についても、講師の方々と協力しながらさらに洗練させていきたいです。

第3回につづく

清水博
清水博(しみず・ひろし)
一般社団法人 ひとり情シス協会
早稲田大学、オクラホマ市大学でMBA(経営学修士)修了。横河ヒューレット・パッカード入社後、日本ヒューレット・パッカードに約20年間在籍し、国内と海外(シンガポール、タイ、フランス)におけるセールス&マーケティング業務に携わり、米ヒューレット・パッカード・アジア太平洋本部のディレクターを歴任、ビジネスPC事業本部長。2015年にデルに入社。上席執行役員。パートナーの立ち上げに関わるマーケティングを手掛けた後、日本法人として全社のマーケティングを統括。中堅企業をターゲットにしたビジネスを倍増させ世界トップの部門となる。アジア太平洋地区管理職でトップ1%のエクセレンスリーダーに選出される。2020年定年退職後、会社代表、社団法人代表理事、企業顧問、大学・ビジネススクールでの講師などに従事。「ひとり情シス」(東洋経済新報社)、「ひとり情シス列伝」(ひとり情シス協会出版)の著書のほか、ひとり情シス、デジタルトランスフォーメーション関連記事の連載多数。産学連携として、近畿大学CIO養成講座、関西学院大学ミニMBAコース、大阪府工業協会ひとり情シス大学1日コースを主宰。

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