宇宙開発競争がもたらすイノベーション

宇宙開発競争の再燃--期待される新時代のイノベーション

Stephanie Condon (ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2022-12-19 07:30

 1962年には、最初の宇宙開発競争がすでに始まっていた。ソ連はユーリイ・ガガーリンによる人類初の宇宙飛行を行った。程なくして、米国のアラン・シェパードが準軌道飛行を成し遂げた。

 その後、ジョン・F・ケネディ大統領が、「1960年代のうちに月へ行き、他のことにも取り組むという道を選ぶ。それが簡単だからではなく、困難だからだ」と述べ、宇宙開発競争を加速させた。この発言はすぐに宇宙開発競争を象徴するものになった。

 ケネディ大統領はこの大胆な目標によって、米国が宇宙開発のリーダーになるという野心的な構想を打ち出し、イノベーションの新時代を切り開いた。

 それから60年後、新たな宇宙開発競争が進行中だ。今回はかつてないほど多くのプレーヤーが大胆な目標に照準を合わせており、宇宙旅行分野の立ち上げ、火星への移住、人類の太陽系外への到達などを目指している。

 「あの大胆さが戻ってきているように思う」。宇宙コンサルティング会社Constellation Advisoryの創設者であるPatricia Cooper氏は、Space Foundationが先頃主催したオンラインシンポジウムでこう語った。「私たちは極めて困難なことに挑戦する気持ちを取り戻した。失敗もあるかもしれないが、再び立ち上がって、前に進み続ける」

 新しい宇宙開発競争は、ある意味でリスクが大きくなった。投入される予算が増大しており、専門的な訓練を受けていない「観光客」を宇宙に送り出し、宇宙飛行士や宇宙船は以前よりも遠くまで到達するようになっている。

 これに伴い、可能性も大きくなった。現在の宇宙開発競争の規模と、それが万人にとって重要である理由を理解するうえで、世界の第1世代の宇宙開拓者たちが与えた多大な影響について最初に考えてみることには価値がある。宇宙に行ったことがある人はわずか数百人だが、宇宙探査を支えるために開発された技術は、日常生活に非常に大きな影響を与えてきた。その一例として、最初の全地球航法衛星システムであるGPSの発展について考えてみよう。

 「GPSは地球上で年間約3000億ドル規模のビジネスであり、誕生以来、米国だけで推定1.4兆ドルを生み出した」とLockheed MartinのLisa Callahan氏は先頃のポッドキャストで述べた。Callahan氏はLockheedのバイスプレジデント兼Commercial Civil Space担当ゼネラルマネージャーだ。

 「ライドシェア業界を見てほしい。この年間600億ドル規模のビジネスはすべて、GPS信号を届ける宇宙資産によって成り立っている」とCallahan氏。「気象分野もよく似た状況だ。米国の気象衛星市場は年間1620億ドル規模で、宇宙資産がその約77%を占める。したがって、宇宙は地球上の経済において、実際に極めて大きな役割を果たしている」

 衛星業界やその他の宇宙関連セクターは地球での生活に直接影響を及ぼしているが、宇宙探査が人類に与える影響は、文化、経済、科学、技術など、無数にある。宇宙関連のイノベーションは、素材、医療、コンピューティング、バッテリー、小型化をはじめ、非常に多くの分野の進歩につながっている。

 1960年代の宇宙開発競争は大胆で重大なリスクを伴う行動を起こさせたが、「その後の数十年は、宇宙開発分野からそうした危険性を排除することが目標だった」とCooper氏は語る。「資金を提供する人や動向を注視する人に、宇宙開発はもっと手を出しやすく、リスクが少ないと感じてもらうためだ」

宇宙開発の再燃

 数十年活気がなかった宇宙開発が、再び活発になっている。Space Foundationによると、2022年上半期には72回のロケット打ち上げで1022機の宇宙船が軌道上に運ばれたという。これは、宇宙時代の最初の52年間に軌道投入された宇宙船の総数よりも多い。一方、世界の宇宙経済は2021年に4690億ドル規模に達し、2020年から9%増と急成長している。

 この10年間で宇宙開発競争が活気づいた要因の1つは、米航空宇宙局(NASA)が何年もの準備の末に立ち上げた野心的な新プログラムだ。

 たとえば、NASAとパートナー組織は、2021年のクリスマスにJames Webb宇宙望遠鏡(JWST)を打ち上げた後、2022年にJWST初となるフルカラー画像を公開した。JWSTは科学と工学の真の偉業であり、星の形成と消滅の画像や、1000光年以上離れた惑星の水蒸気の画像などを撮影し、知られざる宇宙の歴史を垣間見せてくれた。

 一方、NASAが11月にロケットを打ち上げたばかりの「Artemis」計画は、女性と有色人種を初めて月に送り、最終的には人類の火星への旅の準備をすることが目的のミッションだ。Artemis計画を主導しているのはNASAだが、米国は世界中の政府パートナーや多数の民間部門パートナーを動員して、現代的な宇宙服、軌道前哨基地、新しい通信システムなど、Artemis計画用の新技術を開発している。

 Artemis計画は、応援したくなる刺激的で新しい月面ミッションを人類にもたらすだけでなく、新たな宇宙時代が到来したことを明確に示した。Artemis計画の第1段階を開始したのはBiden政権だが、この計画はTrump政権下で始まったものだ。政権交代してもこれくらいの継続性があることが重要だ、と宇宙の専門家らは考えている。

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