長引くコロナ禍でハイブリッドワークを実施する企業も多い中、「オフィスの在り方」が再定義されている。ITツールの普及で仕事自体はデスクワークを中心に在宅でも難なくできるようになった分、オフィスには、ほかの従業員と交流したり、より高い生産性を上げたりするための拠点になることが求められている。
SAPジャパンは2022年9月、グローバルでの方針「Flex Workspace」(働く場所の柔軟性)のもと、本社オフィスを東京・大手町のビルに移転した。総床面積は前オフィスの半分以下だが、フロアごとの面積は広く、従業員同士のコミュニケーション拡充を図っている。移転に伴う新オフィスの見学会で筆者が特に驚いたのは、机などの器具を斜めに配置するレイアウトだ。これにより、従業員の歩行を誘発し、偶発的なやりとりが見込まれるという。
新オフィスには、SAPがグローバルで開発しているアプリケーション「SAP FlexConnect」も導入。同アプリケーションには、自身の働き方の共有、チームメンバーらの働き方や居場所の可視化、用途に合った会議室や机の予約といった機能がある。従業員はチームメンバーの出社状況を把握することで、その日の働き方を決めたり、ランチに誘ったりできる。
より働きやすいオフィスの実現にはITツールの活用が不可欠だが、ツールの種類が複数になると利用や運用の手間がかかってしまう。エイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)とグループ企業の阪急阪神百貨店は12月、オフィスを「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」へ移転し、面積は前オフィスの約70%となった。
両社はスムーズなオフィスの利用に向けて、座席や会議室のオンライン予約、無人受付、顔認証による入退室などを希望していたが、幾つものシステムを使い分けるとなると新たな手間が予想される。そこで、こうした複数の要望に一括して対応するビットキーのプラットフォーム「workhub」を導入した。
単一のシステムでの運用は、スムーズな使い勝手のほか、データが1カ所に集約されるというメリットもある。H2Oの新オフィスプロジェクト担当者は、workhubで収集された入室のログや座席のチェックイン履歴などのデータを活用し、従業員同士のコミュニケーションを促進したり、メンバーの行動を把握して時に気遣ったりすることを考えているという。