機械学習で事業価値を実際に引き出すには

Wing Leong Ho (Cloudera)

2023-01-19 07:00

 業務効率の改善から継続的なイノベーションの実現まで、機械学習は事業の成長に欠かせないものとなっています。一方で、IDCの人工知能(AI)戦略に関する調査「AI Strategies View 2020: Executive Summary」によると、世界中のAIや機械学習に関する取り組みのうち、本番稼働しているのはわずか4分の1強に過ぎず、多くの企業がこの技術のメリットを最大限に生かせていないことが判明しました。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)地域の企業が機械学習で成功するためには、機械学習モデルを組織全体に迅速に導入・展開し、多様なユースケースに対応する必要があります。一方で、機械学習を大規模に展開するためにはデータからモデル、結果に至る複雑で反復的なエンドツーエンドのワークフローを構築する必要があり、これは容易ではありません。

 また新たなガバナンス上の課題も生じます。エンドカスタマー(ユーザー企業の顧客)へのサービスにそれがどのような影響を及ぼすか(つまり、プライバシーの問題)、政府や社内の規制を順守できているか、セキュリティルールが本番環境のモデルに反映されているかなど、さまざまな問題に対処できる体制が必要です。

機械学習の実用化のための基盤を構築する

 機械学習を実用化するためには、機械学習モデルを事業プロセスに組み込めるような、適切なテクノロジー基盤を選択することが重要です。この基盤は、効率的で反復的な機械学習ライフサイクルを走らせ、機械学習モデルの質、拡張性、セキュリティを管理できるものでなければなりません。

 このような基盤として、前回紹介した「エンタープライズデータクラウド」があります。Cloudera Data Platform(CDP)などのエンタープライズデータクラウドを活用することで、ASEAN地域の組織はデータの全体像を把握し、追加の容量が必要であればオンプレミスのワークロードをクラウドに移動させ、ワークロードの解析、最適化を稼働場所に関わらず実現することができます。また、エンタープライズデータクラウドはデータライフサイクル全体を通してセキュリティ、ガバナンス、コンプライアンスを包括的に実現できるため、リクスや運用コストを低減することができます。

 例えば、CDPは一貫したセキュリティとガバナンスを提供し、全てのユーザー、アナリティクス、環境(すなわちオンプレミス、プライベート/パブリッククラウド)でデータアクセスとガバナンスの方針を一元的に管理・維持できる、常時稼働型の「Shared Data Experience」(SDX)を搭載しています。

 データ制御を強化すると、機械学習サービスを重ね合わせたMLOpsを導入することができます。MLOpsとは、データサイエンティストと運用側の担当者が協調、連携して機械学習ライフサイクルを管理する実践手法のことです。モデルの本番環境への移行時間の短縮と課題の解消、チーム間の摩擦低減と連携強化、モデルの追跡、バージョン管理、監視、管理の向上などを目指すものです。また、最新の機械学習モデルの真に循環的なライフサイクルを構築し、機械学習プロセスを標準化して、拡大する規制や方針に備えることができます。

 MLOpsを実現するためには、次のような機械学習サービスが必要となります。

  1. 機械学習ライフサイクル全体を把握して、データのサイロや盲点をなくし、ライフサイクル全体の透明性、説明可能性(explainability)、説明責任(accountability)を確保するためのモデルのカタログ機能やリネージ機能
  2. 機械学習モデルを実稼働環境に安全に展開し、正確性を確保し、ユースケースを拡大するために必要な全てのものをカバーする完全なエンドツーエンドの機械学習ライフサイクル管理
  3. 技術的側面と予測性能を反復可能で安全で拡張可能な形で追跡、監視できる広範なモデル監視サービス
  4. 機械学習モデルの機能的、事業上のパフォーマンスを監視できる新たなMLOps機能。例えば、ネイティブストレージとカスタムおよび任意のモデルメトリクスへのアクセスを搭載した、モデルのパフォーマンスや経時的なドリフトの検出機能、モデルがコンプライアンスに基づき最適に動作するかを確認するための個々の予測性能の測定および追跡など
  5. 全社的に展開する多くの機械学習モデルを、モデルのカタログ、ライフサイクル全体のリネージ、カスタムのメタデータにより追跡、管理、把握できる機能
  6. 単一のシステムで構築、展開されるモデルにひも付けられたデータリネージを把握し、機械学習ライフサイクルの管理、ガバナンスを支援する機能
  7. 機械学習モデルを本番環境で稼働させるための、RESTエンドポイントにおけるモデルのセキュリティ強化

 これらの機能により、モデルの展開やユースケースの拡大に必要な、反復可能で透明性の高い、ガバナンスの担保された機械学習のアプローチが可能となります。機械学習モデルを支えるデータが説明可能(explainable)で解釈可能(interpretable)であれば、組織は社内の基準やコンプライアンスを確実に順守しつつ安心して機械学習を業務に取り込むことができます。

 例えば、通信会社のGlobe Telecomでは、「Cloudera Machine Learning」(CML)を採用してから、Airtime Loans事業の収益が2020年上半期に約120%増加しました。CMLをCDPで稼働させ、ガバナンスとセキュリティを確保しつつ、膨大なデータをリアルタイムに取り込み、部門横断的に分析を解釈し、顧客セグメンテーションを図りつつインサイトを行動に反映しました。またAirtime Loans部門では、CMLの予測モデルを活用し、サービスを利用する可能性の高い契約者を特定し、適切なローンの提案を積極的に行っています。

 実際に業績につながるさまざまな場面に応用できる機械学習は間違いなく企業に大きな変革をもたらすでしょう。このテクノロジーはプロセスの自動化、新たなインサイトの発掘、より優れた顧客体験を提供できる製品やサービスの強化、創出につながります。一方で、機械学習の価値を余すところなく生かすためには、機械学習モデルを構築、開発し、これらのモデルの要素を展開、実用化できることが求められるため、抜本的な運用の改革が必要です。

 このような理由から、ASEAN地域の組織には、エンタープライズグレードのガバナンス機能が組み込まれた、俊敏な実験や本番環境の機械学習ワークフローを実現できるエンドツーエンドの基盤をお勧めします。

Wing Leong Ho
Cloudera APAC地域 セールスエンジニアリング部門 バイスプレジデント (旧:ASEAN地域セールスエンジニアリングマネージャー)

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