NTTデータ経営研究所ら、高知県のゆず農園でローカル5Gを用いたスマート農業実証を開始

寺島菜央 (編集部)

2023-01-11 10:14

 NTTデータ経営研究所を代表機関として、日本の農村を元気にする会、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)、日鉄ソリューションズ、エムスクエア・ラボ(静岡県)、北海道大学、高知県安芸農業振興センター、高知県農業協同組合、土佐北川農園、高知県安芸郡北川村、高知県安芸市の11機関は、1月10日から北川村と安芸市のゆず農園を実証フィールドに、ゆず生産に関する課題解決に向けた実証を開始する。この実証は、2022年8月に「ローカル5Gを用いたスマート農業の実現に向けた実証事業」の採択を受けて取り組む。

 同実証は、ゆず農園にローカル5G基地局を設置し、4K360度カメラやスマートグラスなどのIoT機器を活用した(1)モバイルムーバー(運転台車)を用いた自動防除ソリューション、(2)スマートグラスなどを用いた新規就農者遠隔指導ソリューション、(3)自動防除・新規就農者遠隔指導のシェアリングサービス――で課題実証を行い、ゆずの生産コストの低減、新規就農者の確保・育成を目指す。加えて、ローカル5Gの「電波伝搬モデルの精緻化」「エリア構想の柔軟性向上」についても技術実証として取り組むという。

 (1)と(2)の課題実証は1月10日から北川村のゆず農園で、4月から安芸市内のゆず農園で行う。また、(3)は4月から北川村および安芸市のゆず農園にて実証を行う予定だとしている。

(1)モバイルムーバーを用いた自動防除ソリューション

 同ソリューションでは、小回りが利くモバイルムーバーに農薬散布用ホースと草刈り用アタッチメントを装着して自動運転をさせることで、自動での防除・草刈りを可能にする。車両に取り付けた4Kカメラの映像を、ローカル5Gネットワークを介して遠隔監視制御拠点へ伝送し、遠隔監視制御拠点にいるオペレーターが遠隔でモバイルムーバーを監視。緊急停止・緊急発進などの遠隔操作も可能になる見込みだという(図1)。

モバイルムーバーを用いた自動防除ソリューション(図1)
モバイルムーバーを用いた自動防除ソリューション(図1)

 防除/草刈り作業のために生産者が常時随行する必要がなくなるため、生産者の作業負担の軽減につながると想定しており、防除にかかる作業時間は従来比で50%削減、草刈りにかかる作業時間は従来比35%削減することを目指す。実際の農地で同ソリューションを試験的に導入することで、機能検証や経営改善効果の検証を行う。

(2)スマートグラスを用いた新規就農者遠隔指導ソリューション

 安芸地区では、従業者の高齢化などにより、ゆず生産の新たな担い手の確保・育成が求められているという。同ソリューションでは、NTTビズリンクが提供する仮想現実(VR)サービス「Avatour」を活用した「バーチャル圃場訪問システム」による新規就農希望者の確保、「遠隔指導システム」による新規就農者受け入れ体制の強化を目指す。

 バーチャル圃場訪問システムでは、農地に設置した4K360度カメラの映像をローカル5Gネットワークを介してリアルタイムに伝送することで、新規就農希望者向けのイベント会場など、遠隔地にいる人々の仮想的なゆず栽培農地への訪問の実現を図る。同実証では、同システムを従来の農地見学の代替手段として活用できるレベルに到達させるとしている(図2)。

バーチャル圃場訪問システムのイメージ(図2)
バーチャル圃場訪問システムのイメージ(図2)

 また、遠隔指導システムは、スマートグラスを装着した複数の新規就農者が、ローカル5Gネットワークを介して遠隔指導拠点にいるベテラン従事者から一度に指導を受けられるようにすることで、公立的な指導の実現を図る(図3)。同システムの活用により、新規就農者の指導にかかる工数を従来比で33%削減することを目標にしているという。生産者の指導する内容としては、ゆずの生産・品質向上に直接的に結びつく作業内容である剪定(せんてい)、病害虫判断、収穫/選別を対象とし、遠隔指導による剪定、病害虫判断によって収穫量が従来比で10%増加することを目標に、導入効果の検証を行う。

遠隔指導システムのイメージ(図3)
遠隔指導システムのイメージ(図3)

(3)自動防除・新規就農者遠隔指導のシェアリングサービス

 同サービスでは、生産者が(1)(2)のソリューションを導入する際の負担を軽減するため、モバイルムーバーやスマートグラスなどの機器を複数の生産者で共同利用し、サービス事業者が自動防御時の遠隔監視や遠隔指導パッケージの提供を担う「シェアリングサービス」の実証を行う(図4)。

自動防除・新規就農者遠隔指導のシェアリングサービス(図4)
自動防除・新規就農者遠隔指導のシェアリングサービス(図4)

 複数の生産者でシェアリングを行うことで、ソリューションの導入にかかる生産者の初期費用や運用費を低減し、より多くの生産者へこれらのソリューションを展開していくという。同サービスでは、スマート農機の導入・利用に当たり生産者が負担するコストを32%低減させることを目標にしている。

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