メタバースが変える仕事と社会

メタバースの向かう先--予測困難な今後の展開

Scott Stein (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2023-01-13 07:30

 大規模なテクノロジーの動向は、小規模なテクノロジーと同じではない。筆者はインターネットの進化について、このように考えることが多い。

 メタバースに関してもそうだと思う。

 世界規模のコミュニケーションを目的とした没入型のインタラクティブな新プラットフォームというアイデアは、Meta(別名Facebook)によって明らかに息を吹き返したが、問題が起きそうな気配がすでにある。

 Metaの大幅な人員削減など、テクノロジー業界でのレイオフの波により、夢はすでに終わったのかという雰囲気が生まれた。これは以前にインターネットで起きたことだ。最初のドットコムバブルがその一例で、消えていったアイデアもあれば生き残ったアイデアもあり、その後に誰も予測しなかった新しいアイデアが出てきた。

 しかし、メタバースに関するコンセプトが実際に軌道に乗ったとしても、その後の進化を予測するのは容易ではないと思う。予測とは違う方向に進化するはずだ。ソーシャルメディアの台頭で、人間のコミュニケーションは一変した。電話機もそうだし、インターネットもそうだった。

 さまざまな段階があり、さまざまな影響がある。

 メタバースを構成する要素は明らかに、私たちがすでに認識している要素だが、筆者はDavid Letterman氏によるBill Gates氏との昔のインタビューも思い出す。Gates氏のインターネットについての説明では、どの構成要素もすでに別の場所で利用できるもののように聞こえた。ラジオがあるのに、なぜ野球の試合のストリーミング配信を聞くというのか。

 現在のメタバースもそのような状況にあると思う。もっと没入感のある体験をしたいのなら、大型テレビとヘッドホンを使えばいいだけではないのか。仮想世界を体験したいなら、ビデオゲームをプレイすれば済むのではないか。

 それほど簡単な話でも、それほど単純な話でもないだろう。

 筆者は米CNETでVRとARの記事を約10年間書いている。もっと長いかもしれない。2009年に執筆した最初期のブログ投稿の1つは、拡張現実と魔法に関するものだった。その時点で、筆者はすでに何十年もVRについて考えていた。はるか昔の高校時代からだ。チャットルームやオンラインロールプレイングゲームに関する劇を書いていた。未来の訪れが遅いように思えた。

 本稿執筆時点の2022年になっても、まだ未来を待っていることがほとんどだ。しかし、未来はずっと前から起きていて、自分を取り巻いているのだと気づくこともある。VRはもはや未来ではない。友人たちや筆者が長年使っているものだ。

 ほとんどの人は、仮想現実という概念に興味を持つか、単に無視するかのどちらかだ。理解するか、次のように言うだろう。「自分が使うことは絶対にない。なぜわざわざ使用するのか。利用する人などいるのか」

 筆者は「Meta Quest 2」を自分のオフィスで毎日使用しているわけではない。2日に1回も使っていない。だが、たまに1時間ほど使用すると、自分にとって他では得られない体験を提供してくれる。

 パンデミック下で、VRは筆者が束の間の現実逃避をする場になった。また、「Beat Saber」で身体を動かし、羽を伸ばして、自分には広大な居場所があると感じるための場所でもあった。だが、今最も魅力を感じるのは、ゲームやパズル風のエスケープルームではなく、知り合いやVRで出会う人々との社交の時間だ。大学時代の友人数名にVRで一緒に遊ぼうと誘われて(筆者からではなく彼らの方から)、ミニゴルフやテーブルトップアプリ「Demeo」のロールプレイングゲームを集まってやるようになった。友人たちの声は知っているし、顔も覚えている。アニメのマスクをつけて一緒に遊ぶときは、音声通話で相手を想像するように、彼らの声と顔を投影する。しかし、その体験は、まるで彼らと同じ場所で一緒に時間を過ごしたかのように思い出される。

 また、筆者は幸運にも、他の数名と週に1回集まって、Quest 2でMicrosoftの仮想世界アプリ「AltspaceVR」を使用してアバターでの演技やパフォーマンスを研究している。メンバーの誰とも実際に会ったことはない。私たちは話をして、動きを研究し、どんなときに感情がアバターに乗り移り、どんなときにそうならないのかに注意を向けている。バーチャルスペースでの表現力を高める方法を学んでいる。何もない大きなステージに全員で集まって、本当にそこにいるように感じられたセッションをすべて覚えている。

 このように、VRはすでに時間と空間を歪めて、筆者の記憶に影響を及ぼしている。そうしたことがさらに増えていくと筆者は確信した。

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