米国でフットボールシーズンが開幕した。その観戦に欠かせないのはチキンウィングだが、それを調理するために使われたロボットがチキンを持ち上げられるように、テクノロジーが結集されている。
提供:NVIDIA
NVIDIAは米国時間1月19日、マサチューセッツ州に本社を置く新興企業Soft Roboticsが、チキンウィングなどの食材を扱うロボットの導入を容易にするために、NVIDIAの技術を活用している様子を紹介した。これには同社のGPUや、ロボティクスシミュレーションツールキット「Isaac Sim」などが含まれるという。
ロボットの導入先として、食品加工・包装工場はうってつけの場所に思えるかもしれない。ベルトコンベヤーで次々と流れてくる材料を均一に調理して、食品として提供できる。その一方で、健康や怪我のリスクが高い仕事を埋めるのに苦労している、食肉加工会社など雇用主も恩恵を受けられる。
それにもかかわらず、食品業界でロボティクスツールの導入はあまり進んでいない。一つ一つ形状が異なる食材を掴むことは、ロボットにとって難易度が高かったからだ。鶏肉など、つるつると滑りやすいものは、ことさら困難だ。そして、ロボットが食品を落としたりすると、それは廃棄しなければならない。
また、食品加工ライン向けのロボティクスシステムは、適切なハードウェアのほかにも、コンピュータービジョンと、掴む食材を特定する方法をシステムに教えるために、データセットを使って訓練する必要がある。Soft Roboticsは、Tyson FoodsやJohnsonvilleなどの大手食品メーカーに、こうしたシステムを提供している。同社の「mGripAI」システムは、肉、青果、パンや焼き菓子など、さまざまな食品を掴んで処理できるよう、独自のデータセットで訓練できる。同社は2022年11月、Tyson Ventures、Marel、Johnsonville Venturesから、シリーズCで2600万ドル(約33億円)を資金調達した。
Soft Roboticsは、NVIDIAの「Omniverse」プラットフォームを使い、mGripAIの導入を数カ月からわずか数日に短縮することに成功した。具体的には、マニピュレーションロボットのデジタルツインを構築するためのプラットフォームであるIsaac Simを利用している。NVIDIAが2021年にリリースしたIsaac Simは、同社の合成データ生成エンジンである「Omniverse Replicator」を基にしている。NVIDIAは、AIモデルの構築ではデータが必須条件であるため、これらのツールを開発した。しかし、数多くのAIプロジェクトが高品質なデータの不足に悩まされている。Replicatorの生成データを使って構築したロボットの場合、さまざまな仮想環境でスキルを習得してから、現実世界で応用できる。
Soft Roboticsは、Tyson Foodsなど鶏肉を供給する企業向けにAIシステムを構築するために、Isaac Simを活用し、ベルトコンベヤーや容器の中などさまざまな環境や照明のもとで、鶏肉の部位の3Dレンダリングを作成した。AIシステムはこのシミュレーションにより、積み重ねられた個々の鶏肉がどのように見え、どれが最もつかみやすいかを理解することができる。
また同社は、AIスタートアップ支援プログラム「NVIDIA Inception Program」にも参加している。このプログラムは、GPUのサポートやAIプラットフォームのガイダンスを提供している。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。