インボイス制度は請求書対応だけではない
請求書だけでなく領収書も同様に対応する必要があります。
請求書だけがインボイス制度の対象であれば、請求書を扱う担当者だけにインボイス制度について啓もうをすればいいのですが、領収書もインボイス制度の対象ですので、事実上、経費精算を実施している多くの社員がインボイス制度について理解をした上で経費などの申請や使用をしていただかなければいけません。
一般的な職場では、件数的に請求書より領収書の方が多いでしょう。金額面でいっても、1枚1枚の領収書の金額単価は請求書に比べれば安くても、「塵も積もれば山となる」で、社員数が多い会社ではインパクトも大きくなります。そのため、全社的なインボイス制度に関する啓もうが重要になります。

会計の仕訳入力処理に関するインボイス制度の影響
仕訳を手入力している場合、現状でも軽減税率の影響で消費税が8%、10%、対象外などがあり、それぞれ消費税区分を分けて入力する作業が経理担当者の負担になっています。これに今後は適格請求書発行事業者かどうか、という区分も新たに加わります。
さらに、インボイス制度施行後、6年間にわたって消費税の仕入控除は、段階的に80%控除、50%控除などの経過措置がとられます。それらに関しても、いつまでのものが80%控除で、いつまでのものが50%控除、と分かるように管理しておかなければいけないため、控除比率が変わる狭間のタイミングに来る伝票の色分けが実務上大変になると思われます。
こうした数多くの消費税区分を手入力で1件のミスもなく入力し続けるのは、作業レベルとしてはハードルが高くなります。消費税区分の入力を間違えていた場合、消費税の仕入控除の金額も間違った処理・申告をしてしまうことになりますので、税務リスクにもつながります。

経理のデジタル化は、今に始まった議論ではありませんが「まあ、いいか、まだアナログでもできてしまうし」と先延ばしにしてきた会社も多いと思います。しかし、インボイス制度の施行後は、アナログ作業では限界があることをこれまでの話でご理解いただけると思います。インボイス制度施行時に急に必要性を感じてデジタル化をしようとしてもすぐに現場部署を巻き込んでプロセスを大幅に変えるのは難しいので、現場も経理も混乱することが予想されます。できるだけ早期にデジタル化の体制を敷いてインボイス制度施行時を迎えることをお勧めします。
デジタル化で解決できるインボイス制度の課題
まず、適格請求書発行事業者番号に関してですが、クラウドのソフトウェアを導入することで、国税庁のデータベースと連携することができます。そして、光学文字認識(OCR)などを用いて紙から電子化された請求書や普及が今後見込まれる「デジタルインボイス」を活用することで、クラウド内で請求書と国税庁のデータベースにある適格請求書発行事業者番号を自動で突合できるようになります。
また、請求書の様式がインボイスに該当するかどうかも自動で突合できるようになります。領収書に関しても同様です。それにより、担当者が手作業で適格請求書発行事業者番号を1件1件検索したり、目視で請求書の様式を1件1件チェックしたりする作業負担が軽減されます。
