インボイス制度を機に進める経理部門の「攻め」のデジタル化

インボイス制度を機に進める経理部門の「攻め」のデジタル化(前編) - (page 3)

松岡峻 (マネーフォワード)

2023-01-25 07:35

 また、請求書の発行に関してですが、クラウドを導入することにより、インボイス制度によって義務化されるインボイスの控えもそのままクラウド上に保管できます。紙ベースで保管する場合に必要なコストもかかりませんし、請求書の紛失などのリスクもなくなります。

 さらにデジタルインボイスを用いれば、仕訳処理はそのデータを基に、取引先マスターや取引日付などから消費税区分を自動で連携して仕訳計上できるようになるため、手作業で仕訳入力を行う際に起こり得るリスクを解消することができます。

 経理業務のデジタル化をすることで、照合作業の際に起こる人的ミスによる税務リスクを回避することができますので、経理業務のデジタル化は必須だと考えます。

インボイス制度より先に電子帳簿保存法に対応すべき理由

 電子帳簿保存法の完全義務化は当初、2022年の1月からの予定でした。しかし、企業の対応状況の遅れを鑑みて2年間の宥恕(ゆうじょ)期間が設けられたほか、2022年12月発表の「税制改正大綱」では保存要件や検索要件について大幅な緩和がなされていました。これにより「各種書類のデジタル化は止めてもいいのでは?」という声も聞かれるのですが、私は引き続き、デジタル化は推進した方がよいと考えます。

 理由としてはまず、電子帳簿保存法に対応することで、インボイス制度対応の土台が構築されるためです。

 というのも、インボイス制度に対応するクラウドサービスは、各ベンダーが現在開発中で、同制度施行の数カ月前からリリースのスケジュールが組まれています。一方、電子帳簿保存法に対応するサービスは、各ベンダーが本来の義務化予定だった2022年1月を目標にサービスを開発し、既にリリースされていますので、そちらの方からまず導入をし、デジタル化を進めた方がいいと思います。

 また、電子帳簿保存法の対応を先にすることで、インボイス制度への対応もかなりの部分が実質的に網羅できるメリットもあります。

 例えば、請求書の発行部分は、クラウドを導入することで、まず請求書の発行、郵送、保管の業務がデジタル化されます。そして、インボイス制度に準拠した請求書のフォーマットは、後からバージョンアップでクラウドに自動で追加されますから、クラウドを導入した時点で実質的には請求書発行に関するインボイス制度の対応がほぼ終わったと同じことになります。

 このように、インボイス制度施行時の業務負担をできるだけ事前に分散させておくことも重要です。早めにデジタル化に対応しておくことで、アナログ作業の時よりも業務時間が効率化され、それによってできた時間を、インボイス制度の事前準備に充てることができます。例えば、既存取引先に関しては今のうちからインボイス制度に関する対応状況をヒアリングし、適格請求書発行事業者番号が確定している取引先に関しては自社の取引先マスターに事前に登録するなどしておくことで、インボイス制度施行時の業務負荷を分散させることもできます。

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 また、税制改正大綱の「緩和内容」についても注意が必要と考えています。一つは、改正後もデータダウンロード要請に応じないといけなくなる可能性があり、こういった要請に応えるにはシステム的に伝票とひも付けた形での保存が有効です。

 二つ目には、検索要件などを満たして電子取引データを保存できない場合、税務署長が「相当の理由」があると認めるときには問題ないということですが、全ての会社において「相当の理由」と認められるかどうかは不透明です。

 そもそもデジタル化がもたらす効率面での恩恵も大きなものであり、法律で強制的にというよりも、積極的に進めるべきものと考えています。マネーフォワードでは電子取引はもちろん、任意適用のスキャナー保存、帳簿などについても電子帳簿保存法に適用しました。結果、請求書・領収書の紙が現場部署から届く枚数は完全ゼロになりました。経理のみならず、現場部署も含めて効率化できましたし、データ化されていることにより、検索も容易です。

 インボイス制度の施行で「経理のデジタル化」が叫ばれる理由はお分かりいただけたと思います。それではクラウドさえ導入すればインボイス制度への対応は完璧なのでしょうか。インボイス制度は多くの人達に関係する制度ですので、全社的な啓もうやコミュニケーションが必要になり、その点に関しては「ヒト」にしかできないことです。

 後編ではインボイス制度対応でヒトが対応しなければならないポイントについてお伝えします。

松岡 峻(まつおか・しゅん)
マネーフォワード 執行役員 経理本部 本部長
1998年ソニー株式会社入社。各種会計業務に従事し、決算早期化、基幹システム、新会計基準対応PJなどに携わる。英国において約5年間の海外勤務の後、2019年4月より当社参画。「マネーフォワード クラウド」を活用した決算早期化やリモートワークなど、各種改善を実行。中小企業診断士、税理士及び公認会計士試験に合格。

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