富士通は1月31日、2022年度(2023年3月期)第3四半期の連結業績を発表するとともに、2022年度を最終年度とする中期経営計画の目標を事実上撤回した。同社が打ち出した中期経営計画では、最重視する経営指標として、テクノロジーソリューション事業で営業利益率10%、売上収益で3兆2000億円を掲げていたが、決算会見で2022年度の通期業績見通しの修正を発表。テクノロジーソリューション事業の業績見通しを2022年10月公表値に比べて200億円増の3兆2200億円、営業利益を300億円減の3000億円とし、営業利益率は9.3%とした。
富士通 取締役 執行役員 SEVP/CFOの磯部武司氏
取締役 執行役員 SEVP/CFOの磯部武司氏は、「中期経営計画の達成については、気持ちとして断念しているつもりはない。どこまで追い込めるか、どこまで積み上げるか。そこに取り組んでいく」と強い意欲を見せながらも、「残念ながら当初計画の下方修正となり、冷静に見れば達成は難しいという評価になる」と認めた。
実は、為替影響を除けば売上収益が3兆1500億円、営業利益が3150億円の見通しとなり、営業利益率は10%になる。営業利益率では目標に達することになる。期末まであきらめない姿勢を見せる磯部氏だが、この数字についてはこだわりを見せるそぶりがない。「為替影響を除いた数字で語るつもりはない。定量的に見て、ターゲットには届いていないのは事実」と、冷静に答えた。
では、富士通は、このテクノロジーソリューションの通期見通しの数字をどう評価しているのか。磯部氏は次のように説明する。
「達成困難と評価をしたが、収益構造の大きな枠組みでは、確実にトランスフォームしていると実感しており、売上拡大や収益拡大に結びついている。大きなベクトルや着地点は、中期経営計画の方向性に沿っている」
今回発表した第3四半期累計(2022年4~12月)業績は、売上収益が前年同期比3.7%増の2兆6367億円、営業利益が18.1%増の1732億円、税引き前利益が29.2%増の2046億円、当期純利益が9.3%減の1127億円で、営業利益は過去最高益を更新した。
第1四半期は、部材供給影響が強く残り減益でのスタートだったが、第2四半期には国内外ともにSI/サービスを中心にした受注が拡大。第3四半期は、SI/サービスの受注が堅調に積み上がったほか、部材供給遅延の影響もリカバリーに転じて、「力強い積み上がりが見られ、採算性の改善も着実に進んでいる」(磯部氏)と、事業成長に手ごたえを示す。
テクノロジーソリューションの売上総利益率が31.1%となり、特にソリューション・サービスは36.7%にまで高まっている点も見逃せないプラス要素だ。磯部氏は、「この勢いを止めず、2023年度につなげられるようにしたい」とし、「営業利益率10%はグローバルビジネスに入っていくためのスタートライン。ゴールではない。そのため将来に禍根を残すような形で無理や、不健全な形で努力をするつもりもない。将来の成長路線に乗せ、取り組みを続けていきたい」と語る。
当初目標を下回る見通しに修正したものの、大きな流れは中期経営計画の方向性をトレースしているというのが同社の見方だ。これまでにも富士通は、営業利益率10%という目標を何度も掲げながら、それに到達できなかった背景がある。今回の修正目標を達成すれば、富士通にとっては歴史的だ。
しかし、第3四半期累計でのテクノロジーソリューションの売上収益は2兆2201億円、営業利益は1076億円、営業利益率は4.8%にとどまる。下期偏重の同社だが、まだ予断を許さないとの見方もできる。
受注状況
ファイナンス分野や官公庁関連で、第4四半期に大口案件が控えていること、エンタープライズ分野では、デジタル変革(DX)やモダナイゼーションに対する投資意欲が強いこと、自治体におけるシステムの標準化やネットワーク増強の動き、補正予算関連案件の獲得、医療分野におけるクラウド電子カルテ商談など、明るい材料はあるが、これらをどれだけ取り込めるかが鍵になる。「国内受注には強いデマンドがある。第4四半期に追い込みをかける」と、磯部氏が語る理由もそこにある。