ウェブサイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を提供するWovn Technologiesは2月16日、修正が必要と思われる翻訳箇所を自動検出する「WOVN Autopilot」を同社カンファレンス「GLOBALIZED インバウンド2.0」で発表した。
ウェブサイトを多言語化する場合、コンテンツが更新されるとその部分が検知され、機械翻訳される。そして、品質チェックで翻訳に問題が発見されれば、修正するという作業を繰り返しながら運用する必要がある。WOVN Autopilotはこのプロセスを自動化する。
例えば、ホテルのウェブサイトを多言語化した場合、カレンダー形式になっている予約ページで曜日を示す「水」が「Wednesday」ではなく「Water」と機械翻訳されることがある。また、翻訳前の文字列に比べて翻訳後の文字数が多くなり、レイアウトの崩れが起こることもある。このような問題を一つ一つ人力で検出するのは、時間と労力を要する。
WOVN Autopilotを使うと、修正が必要と思われる部分が自動で検知される。チェック担当者は、必要な部分だけを確認することで翻訳の品質を管理できるため、作業の負担軽減が期待される。
WOVN Autopilot利用時の画面
ファイルと動画字幕の多言語化でも利用が可能なため、ウェブサイトにPDFが掲載されていたり、動画が埋め込まれていたりする場合でも対応するという。
2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の流行は、対面で行われていたサービスをインターネットで可能とするなど、デジタル化を進めるきっかけになった。このような移行は、インターネット上にある日本語コンテンツも増加させた。
2023年に入ってコロナ禍の状況にも変化が見られ、激減していた訪日外国人の数が回復しつつある。今後期待されるインバウンド需要の拡大に対応するため、ウェブサイトのコンテンツにも多言語化が求められている。
多言語対応の傾向としては、2019年までは中国語、韓国語、英語に翻訳していればまずは十分だったが、2023年以降は、これらに加えてベトナム語、タイ語、フランス語、スペイン語などが増えてくるとWovn Technologiesで取締役副社長 最高執行責任者(COO)を務める上森久之氏は指摘する。
ウェブサイトを多言語化する方法には、機械翻訳と人力翻訳の2通りがある。しかし、機械翻訳であっても誤訳の可能性があるため、人によるチェックが欠かせないというのが実状だ。人力翻訳では多額のコストと多くの時間が必要となる。その結果、品質、コスト、納期(QCD)がトレードオフになるという課題があると代表取締役社長 最高経営責任者(CEO)を務める林鷹治氏は述べる。
その解決策として、林氏は、コンピューターと人間が互いの長所で作業を補完する「ヒューマンコンピュテーション」を挙げ、WOVN Autopilotについて、ローカライゼーションを完全自動化するヒューマンコンピュテーションと続けた。
「5分で検知、10分で修正。全自動で安心のローカライゼーション」がコンセプトのWOVN Autopilotは、「QCDを両立させる」と林氏。利用する事業者は有益な情報を作ることに専念でき、多言語発信の完全自動化を可能にするとアピールした。
上森久之氏(左)と林鷹治氏
今後の予定としては、文化適合があると林氏。入力フォームにある氏名の“ふりがな”欄も他言語では不要なため、削除する必要があるとし、そのような適合を可能にしたいと述べた。国ごとに異なる個人情報関連の法律への対応といった法令適合も考えているという。
ECサイトでは、アパレル関連なら暑い国ではTシャツを、寒い国ではダウンジャケットをトップページに掲載するといったローカライズも目指している。また、購入ボタンを翻訳するような場合でも効果の高い翻訳を選択できるようにしたいと林氏は述べた。
WOVN Autopilotは、顧客テストが現在終了しており、3月以降の提供が予定されている。