新潮流Device as a Serviceの世界

PCの使い方で大きく違う温室効果ガス排出量の削減効果

松尾太輔 (横河レンタ・リース)

2023-03-09 06:00

 先日の夕食時、ニュースを見ていた小2の息子が「SDGs」(持続可能な開発目標)という言葉に反応して、「知っている」と言い出しました。びっくりしました。

 小学校で教わったり、NHKの教育チャネル(Eテレ)で見たりして、覚えたそうです。意味はよく分かっていませんでしたが――。まさに猫も杓子もSDGs。今回は、どの企業でもホットな話題のSDGsにちなんで、「Device as a Serviceは環境にやさしいのか?」という疑問にお答えしたいと思います。漠然とAs a ServiceやレンタルPCが環境に優しそうだと思っている方も多いと思います。果たしてそれは事実なのでしょうか。

 「環境にやさしい」には、いろいろな定義があると思いますが、環境負荷を軽減するという点において最近よく目指すべき姿と言われるのは、「脱炭素」や「カーボンニュートラル」などでしょうか。温室効果ガスの排出量をなるべく少なくし、排出自体をゼロにするのは無理にしても、排出量と吸収量を等しい量にして、実質的なゼロを目指しましょう――というのが、カーボンニュートラルという考えです。

 「Device as a Serviceは、カーボンニュートラルに貢献することが出来るのか?」。日本ITDA協会(旧情報機器リユース・リサイクル協会)のウェブサイトには、下記のように書かれています。

サーバーやPC、スマホなど、適正なデータ消去を経たうえでITAD事業者により再流通されています。
情報機器の再利用は環境にやさしいとされています。
新品のPCは約300㎏前後のCO2を排出します(※各種LCA測定資料に基づく)リユース品に掛かるCO2は20~40㎏なので、260~280㎏台のCO2削減効果があります。


 なるほど。PC1台を製造するための二酸化炭素(CO2)排出量は300kgと推定され、それを再利用することにより、新しいPCを作らなくて済み、リユースPCにかかるCO2排出量は20~40kgと推定されるので、10%以下にCO2排出量を抑えられるということです。Device as a Serviceは、レンタルPCをベースにしてリユースが想定されていますから、貢献できそうです。

 ただ使っていたPCをリユースに回せば、新品のPCを利用した場合と比べてCO2排出量を減らせるのは、リユースに回した自分たちではなく、リユースPCとして買った人のような気がします。理論をこねくり回せば、新品のPCをリユースに回したことで、新品のPCにまつわるCO2排出量を相殺する論も成り立ちそうな気もしますが、企業の目指すべき「脱炭素に貢献」とはちょっと違う気がします。

 そもそも、企業の売上高100万円当たりのCO2排出量は、大和総研の2016年12月のレポート(PDF)によると、平均で1.72tだそうです。

 業種によって異なるので、一概に言えませんが、1人当たりの売上高が仮に5000万円だとしたら、1人当たり年間86tのCO2排出量となります。1人1台のPCが割り当てられているとして、それを新品からリユースPCにしたとしても削減されるCO2排出量はわずか約200kg、3年に1回PCを買い替えるとして年間の削減量率は全体のわずか0.07%です。その貢献は、ごく軽微と言わざるを得ません。

 どうりで、「リユースPCでCO2排出量削減!」と、声高に叫ぶ人が少ないわけです。このために、性能で劣る中古PCを従業員に割り当てようとするかといえば、しないでしょう。修理対応なども増えるでしょうし、そもそも省電力性能も違ってきます。もしかしたら、逆に利用中のCO2排出量が増えてしまうかもしれません(とはいってもPCの消費電力にかかるCO2排出量もごくわずかの1時間当たり17gなのでその影響も軽微といえば軽微です)。少なくとも、リユースPCを利用していくことが温室効果ガス排出量を削減する、環境負荷の軽減に貢献しているというのは難しそうです。

 残念ながら、企業単位で見た温室効果ガス排出量という点では、リユースPCの効果をもってDevice as a Serviceが環境負荷の軽減に貢献するとは言い難いようです。国際的な気候変動イニシアチブの温室効果ガス排出削減目標である「Science Based Targets(SBT)のように、企業が環境問題に取り組んでいることを示す目標設定でその効果を見ることは、それこそ難しいでしょう。

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