これには膨大な電力が必要だ。国際エネルギー機関(IEA)が2022年9月に発表したレポートによると、データセンターとデータ通信ネットワークが消費している電力は、世界の電力需要のおよそ1%を占めているという。電力使用効率の向上により、この値は過去10年間、変動していないが、気候変動が電力供給に暗い影を落とす中、大手IT企業はよりサステナブル(持続可能)な戦略に取り組むようになっている。そういった戦略には、太陽光や風力といった再生可能エネルギーへのシフトのほか、温室効果ガス排出量を相殺するためのカーボンクレジットの購入、水資源の再利用、他の冷却手段の検討が含まれている。またIT業界は、スウェーデン政府やフィンランド政府の協力の下、寒冷な環境に複数のデータセンターを建設し、寒冷地特有の外気を利用して施設内の温度を管理可能なものにしようとしている。
しかしながら、全てのデータセンターを北極圏近くに設置するわけにはいかない。というのも、データセンターはユーザーや法人顧客の近くに配し、データの要求から調達までの時間、すなわちレイテンシーをできる限り抑える必要があるためだ。これこそ、金融業界がニューヨーク証券取引所の目と鼻の先にあるマンハッタンのデータセンターを借り続け、取引の遅延を最小限に抑えようとしたり、Netflixが大都市の近くでAmazon Web Services(AWS)のデータセンターインスタンスを立ち上げ、「ストレンジャー・シングス 未知の世界」の次のエピソードを視聴しようとしているユーザーをそれほど待たせなくても済むようにしている理由だ。
データセンターは人口密集地に近いところに設置する必要がある。これはつまり、その地域における気候の影響を受けるということを意味している。

データセンターの効率は年々向上してきているが、依然として大量の電力と水を必要としている。
提供:gorodenkoff/Getty Images
Googleの元最高経営責任者(CEO)兼会長であるEric Schmidt氏は2022年4月にCNBCに対し、「気候変動に対処しなければ、われわれは大変な目に遭う」と述べた。同氏は2017年に、未来に目を向けた分野の研究を支援するために自らで慈善団体を設立した。同氏はその活動を通じて、気候変動は無視できないとの認識を得たという。そして同氏は、「われわれは実際に孫やひ孫、そしてその子どもたちを危険にさらしている」と語った。
専門家らは、より環境負荷の低いデータセンターを設置することも可能だとしている。しかし、その実現は容易ではないだろう。