しかし、データセンターへの影響を吟味していくとともに、データの流れを維持し続ける上での全体的な系の姿が明らかになってくる。データセンターという施設を離れて全体を俯瞰(ふかん)すると、データセンターがどれだけ水やエネルギーに依存しているのかが明らかになってくる。そして、これらリソースは気候変動後の世界に向けた備えに影響を与えるのだ。

データセンターは設置地域における大量の水資源を必要としており、地元コミュニティーの懸念を呼んでいる。
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水は農業のためのみにあらず
気候変動によって生み出される最も劇的な変化として水に関連する話もある。水は地球上の生命に欠くことができない構成要素というだけでなく、われわれのデータにとっても重要な資源だ。
データセンター施設は、他の産業における施設と見た目は同じだが、一般的なオフィスよりも多くの水を冷却目的で消費している。データセンターでは効率を重視し、大半の水を再利用するようになっているため、それほど大量というわけではないが、それでも水資源は時とともに貴重なものになっていくばかりだ。バージニア工科大学が2022年4月に公開したレポートには、米国内のデータセンターの5分の1が、乾燥している米国西部の水源供給に中〜高程度の負荷を与えているため、地元のニーズに懸念がもたらされていると記されている。米国の複数の都市もその点について危惧している。
ビラノバ大学の准教授兼Center for Energy-Smart Electronic Systems(ES2:省電力電子システムセンター)の責任者であるAaron Wemhoff氏は、周辺地域の水の消費量に目を向けるのが有効だと述べている。同氏が「水の欠乏フットプリント」と呼ぶ指標は、データセンターが使用している水の量だけでなく、データセンターに電力を供給している周辺の発電所施設が消費している水の量(データセンターの冷却設備が空冷式である場合、より多くの電力が必要となるため)も計測して算出される。
その結果、水冷か空冷かというちょっとしたトレードオフによって、意外な結論が導き出された。Wemhoff氏の調査によると、データセンターの設置地域によっては空冷ではなく水冷にした方がよいという結果になったという。同氏は「施設内で水が多く使用されるとしても結果的には(中略)そちらの方が優れているという結果になった。水の欠乏フットプリントは低い値だった」と述べた。