問題の深刻化--そして真の解決策とは?
2022年11月に開催された国連気候変動枠組条約第27回締約国会議「COP27」では、気候変動の影響を受けると考えている国々の間で不満が高まっていることが明らかになった。こうした国々は、気候変動の責任がある国々(主に西側諸国)に対して賠償金の支払いを求め始めたのだ。この種の不満はIT業界内でも見受けられる。大手IT企業のサステナビリティーに対する公約を詳細に吟味した専門家らは、これら企業が発表した崇高なプレスリリースに見合った実践が伴っていないという結論に達した。
複数の非営利団体は、「カーボンニュートラル」や「ゼロエミッション」という言葉の意味を説明することなく声高に主張している大手IT企業にプレッシャーを与え、こうした企業が誠実であり続けるよう求めている。詰まるところ、透明性が不足しているのだ。
サステナブルなデータセンターに向けたロードマップを追求する業界団体Sustainable Digital Infrastructure Allianceの共同設立者であるMax Schulze氏は、「われわれは社会の一員として、データセンターとテクノロジーがもたらす環境への影響に対する透明性だけでなく、社会的影響や経済的影響に対する透明性も持つ責任がある」と述べた。同氏は、動画やストリーミングの1カ月あたりの再生時間といった業務指標を明らかにしていないYouTubeと、鉄鋼の生産時に発生する汚染物質やCO2の排出量と生産トン数の開示を法律で求められている鉄鋼業界を比較した。
一部の企業が、温室効果ガスの排出ゼロを目指すのではなく、再生可能エネルギーを支援する独自の気候変動対策について声高らかに主張するのは、ある意味において仕方のない話だろう。Googleは2007年以来、カーボンオフセットの利用による「100%カーボンニュートラル」を大々的に推進しており、同社は2022年版サステナビリティーレポートにも記しているように「排出する温室効果ガス全てを相殺できる」だけの十分なクレジットを購入している。さらに2017年以来、世界各地の同社事業で消費する電力に相当する再生可能エネルギーを購入してもいる。同社はクレジットとクリーンエネルギーを購入することで、実質的にCO2の排出量をゼロにしようとしている。
またWemhoff氏によると、一部の企業は敷地内にソーラーファームやウィンドファームを設置しており、そのこと自体は望ましいものの、今のところ必要な量のほんの一部しか賄えていないという。ただ全ての電力を賄おうとすれば、Googleがネバダ州に建造を計画している太陽光発電施設のように、データセンターに隣接する土地にソーラーファームやウィンドファームを建設する必要がある。しかしこういったことは、大規模な投資とへき地という環境がなければ実現できない話だ。
多くのIT企業は利用可能であれば、より環境に優しいリソースから生み出された電力を購入したいと考えている。しかし、環境に優しいリソースから電力を生成したり、そのような電力を購入したとしても、CO2の排出がなくなっているわけではない。地球温暖化による破滅的な影響を低減するには、CO2の排出を削減するしかなく、「オフセット」という考え方を解決策ではなく邪念だと位置付ける必要がある。最近、HBOの「Last Week Tonight with John Oliver」でカーボンオフセットが取り扱われた際(YouTube動画)、John Oliver氏は「ちょっとした投資をするだけで、カーボンフットプリントをゼロにできるというのは、あまりにも都合がよい考えだと思うかもしれない。実際のところ、それは都合の良い考えでしかない」と述べた。