一部の企業は、よりサステナブルな未来に向けた別の道を歩んでいる。サムスンとAppleはスマートフォン分野の覇権を巡って毎年のように戦いを繰り広げているが、両社はそれぞれ2022年に、マングローブを植林したり、保護するという新たなイニシアチブを開始した。マングローブは、最も効率よくCO2を吸収して酸素に還元できる植物に分類されている。サムスンはマダガスカルに200万本を植樹する計画であり、Appleはインド社会にバイオストーブを提供し、マングローブの林が燃料目的で伐採されないようにするという。
専門家らは、大手IT企業がカーボンオフセットに目を向けることをやめ、CO2の排出防止や削減に注力すべきだと主張している。
IT企業へのサステナビリティーについてのアドバイス提供や、企業におけるCO2排出量の見積もりを実施しているClimatiqの共同創業者であり最高売上責任者(CRO)でもあるPhilipp von Bieberstein氏は、「私の考えでは、唯一の取り得る選択肢は除去、すなわち大気中からCO2を取り除くために投資することだ」と述べた上で、その解決策として、空気中から文字通りCO2を吸収するという大気からの直接回収と、CO2の排出経路からのフィルターを用いた吸着回収という2つの取り得る解決策を提示した。
大手IT企業が自らの排出しているCO2に対して直接的な行動に出るかどうかにかかわらず、企業が世界の温暖化の責任の一端を担っているという事実に変わりはない。各社のサステナビリティーレポートを読めば、企業が自らの物理的な施設によって気候に影響を与えていると認識しているのは明らかだ。そして、データセンターを建設するための鋼材やコンクリートを製造する際に生み出されるCO2を考慮するのは問題の一部でしかない。この他にもデータ自体を取り扱うサーバーやコンピューターは全て、大量の電子廃棄物になるという問題もある。
クラウドコンピューティングなどのデータサービスを提供する企業は、最先端の機器を必要とするため、サーバーを3年程度で交換している現状がある。世界中に存在するデータセンターの膨大な数を考えた場合、このことはつまりFIFAワールドカップの開催間隔よりも短い期間で驚くほど多くのサーバーが製造/出荷/設置/交換されていることになる。
さらに悪いことに、これらサーバーの多くは再利用されるのではなく、分解されてスクラップとなる。また、そういった機器に保存されているデータのプライバシーやセキュリティという観点から、サーバーに搭載されているハードディスクは粉砕される場合もある。
大手IT企業でサーバー廃棄物の問題に取り組んでいるところはさほど多くないが、一部の企業はサステナビリティー目標に取り込んでいる。例えば、Googleは同社のサーバーアップグレードの4分の1強を再生品で賄っており、490万ものコンポーネントを中古として他社に転売している。また、Microsoftはデータセンターの機材や電子機器の多くを再利用する再生センター(Circular Center)を6カ所に設置しようとしており、最初のセンターを2021年に開設した。さらに同社は2025年までにサーバーやコンポーネントの90%を再利用するという目標を掲げるとともに、サーバー交換までの期間を4年から6年に延長しようとしている。