PCビジネス関係者の間でまことしやかにささやかれる「2025年の崖問題」というのをご存じでしょうか。経済産業省が唱える「2025年の崖問題」ではありません。2025年10月に「Windows 10」のサポートが終了します。それと同時に、2020年に大量に導入された「GIGAスクール」のPCが一般的な耐用年数の5年を迎えて、リプレースの時期に入ります(個人的には、モバイルノートPCの耐用年数として5年は長過ぎると思いますが)。
最近は緩和されつつありますが、半導体不足の影響が長引く可能性も否めず、それらの要因が重なり、2019年のWindows 10移行の時のようなPC供給のひっ迫が起こるのではないか、たとえPCがあったとしてもそのキッティングなどのベンダーの工数が不足するのではないか――その危機感が、PCにおける「2025年の崖問題」です。特に昨今、どの業界でも人手不足です。新たなPCの導入作業が集中すると、そのための人手が足りなくなる恐れは大いにあります。
人手不足について、既にGIGAスクールの現場から悲鳴が聞こえています。3月は卒業の季節です。GIGAスクールで配られたPCが学校に返却される時期でもあります。この時期になると、担任を持つ先生は大変とのことです。
これは実際にあった話といいますか、私の長男が通う小学校でのお話です。長男が通う小学校では「iPad」を採用していましたが、担任の先生から、「iPadの返却に際して、故障などの問題がないか厳密に確認して返却するように」と保護者向けに通達がありました。
なんでも、もし故障したまま返却し、次の子供に配布された後にその故障が発覚した場合、次に配布された子供の家庭が修理費用を負担しなければならないそうです。そんな馬鹿なことがあるのかと思いました。結局は、担任の先生が全台(30台以上)厳密にチェックすることにしたそうですが、ただでさえ重労働が問題になっている公立小学校の先生に何をやらせているのだと思いました。本当にびっくりしました。この問題は、端末がPCであったとしても同じです。
以前の連載の記事で、「GIGAスクールこそDevice as a Serviceを用いるべきだ。モノを買って与えたら終わりにするべきではない。その後の再利用で痛い目に遭うぞ」(下記参照)と申し上げました。まさにこれが的中した格好です。
(「なぜ、サブスクか?--『モノを買って与えたら終わり』ではないということ」より抜粋)
結局ひどい目に合うのは、現場の担任の先生であり、子供たちとその保護者です。息子の担任の先生は、職務に誠実で子供たちのことを思い、この重労働をいとわずすることを選びましたが、そんな先生ばかりではないと思いますし、そもそも先生頼りにしてはいけないことなのだと思います。
また、私の同僚のお子さんが通う小学校では、「Chromebook」が配られたそうですが、返却の際に「中のデータやファイルを消すように」という指示もあったそうです。ご存じの読者の方もいると思いますが、Chromebookは、ファイルをダウンロードしてローカルに保存することもできますが、オンラインストレージの「Google Drive」のみでファイルを取り扱い、ローカルへの保存を禁止することもできます。本来なら、きちんとポリシーを設定しておけば、返却時のデータやファイルの消去の注意喚起をすること自体が不要です。
そもそもGIGAスクール向けのChromebookは、その本体と「Chrome Education Upgrade」というモバイル端末管理(MDM)サービスのライセンスを含めて、文部科学省が購入を補助(公立学校情報機器整備費補助金)する4万5000円に収まる価格設定がされています。そのため、小学校で使われるChromebookは、エンタープライズクラスの管理が可能です。当然リモートワイプも可能です。機能的には問題ないにしても、運用側のリテラシーが追い付かず、正しく使い切れていないように見受けられます。
まさに国の方針として、「モノを買い与えただけで終わり」という有様です。「モノ至上主義」といいますか、なぜ始めた時に、ここまで運用に頭が回らないのか不思議でなりません。