大手ITベンダー各社が一様にハイブリッド/マルチクラウドを見据えた戦略を展開する中、「ハイパースケーラー」の一角ながらも後発の米Oracleは、有利なポジションにあると強調する。「あらゆるクラウドが相互接続することになる」と話すレベニューオペレーション担当エグゼクティブバイスプレジデントのJason Maynard氏に、クラウド戦略などを聞いた。
Oracle レベニューオペレーション担当エグゼクティブバイスプレジデントのJason Maynard氏。
--Oracleにとって年次最大イベントの「OpenWorld」を「CloudWorld」に改称するなど、「クラウド企業」としてのメッセージを強く打ち出しました。「データベース企業」からの変革が進んだ結果なのでしょうか。
今もなお「データベース企業」ですよ(笑)。正確には、クラウドにおいてベストなデータベースを備える「クラウド企業」です。Oracleのクラウド戦略で特徴的なのは、データベースもビジネスアプリケーションも、医療や金融、通信など約20種類の業界特化型サービスもそろえ、それらがOracleのテクノロジースタックで安定して稼働し、インフラとアプリケーションの双方が進化しながら提供されている点と言えます。
もちろん「Exadata」などのハードウェアシステムのビジネスもあります。現在でもオンプレミスのExadata上でワークロードを運用しているたくさんのお客さまがいますからサポートを提供していますし、従来のビジネスも継続しています。
数十年にわたってビジネスを展開している多くのテクノロジー企業がここ数年で大きな変革に迫られており、Oracleもその1つですが、Oracleにとってデータベースは引き続き重要な中核であり、クラウド企業へと変革しつつも、従来のビジネスにもしっかり取り組んでいます。中小企業向けには、例えば「NetSuite」がありますし、開発者向けには「Java」環境やオープンソースデータベースの「MySQL」があり、ローコード開発環境の「Oracle APEX」も用意しています。
--やはり顧客にとってクラウドは重要なテーマです。Amazon Web Services(AWS)やGoogle Cloud、Microsoftよりも後発ですが、Oracleのクラウドをどう特徴づけられますか。
後発であるが故に競合の様子を見て、性能やセキュリティ、安定性など(クラウドの)基本的な部分をさらに改善して参入できた点が特徴だと言えます。そのためお客さまから評価を得ていますし、お客さまの成功を実現できていると思います。例えば、Uberがインフラを「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)で再構築しましたし、NVIDIAとのAI開発をスタートさせるなど、(競合が先行する)新しいクラウドの活用領域にも進出できるようになりました。
そうした意味で、既存のお客さま環境をクラウドに移行することも、例えば医療業界でのCernerの買収を通じた変革を実現することも、Uberのようなクラウドネイティブなお客さまの選択肢となったこともOracleのクラウドの特徴だと言えます。
--クラウドへの参入当初は競合比較で優位性をアピールしていました。今ならどう特色を打ち出せますか。
かつてクライアント/サーバー時代に多くのベンダーが参入したように、現在のクラウド市場は、幾つものサービスが併存するマルチクラウド環境にあります。お客さま側でも複数のクラウドサービスを同時に併用していく状況が今後ますます広がるでしょう。ここでは相互運用性が重要になりますから、2022年のCloudWorldでは「Microsoft Azure」との連携の拡大を発表しました。
Oracleは幸いにも後発だったことから、マルチクラウドへの対応を実現しやすい立場にあり、お客さまもマルチクラウドの相互運用を望まれていますから、その期待に応えていかなければなりません。例えば、Cloud Worldで発表した「Oracle Alloy」を利用してOracle以外のサービスプロバイダーもクラウドサービスを提供できるようになります。政府系機関や官公庁などは、国内でデータを管理することが求められますから、デディケイテッドリージョンクラウド(地域型・特化型クラウド)やソブリンクラウド(データ主権型クラウド)も重要になってきます。つまり、オープンかつ相互運用性を兼ね備えていることが特色と言えます。