デロイト トーマツ リスクアドバイザリー(DTRA)とオープンテキストは4月17日、電子データ管理の業務変革に向けた協業を発表した。オープンテキストが提供するエンタープライズコンテンツ管理(ECM)「OpenText Extended ECM」と、DTRAのAI-OCR「Deep ICR」を連携させ、契約書や請求書などの電子データ管理における業務プロセスの円滑化を狙う。トーマツ リスクアドバイザリー事業本部 オペレーショナルリスク パートナーの佐藤肇氏は、コロナ禍で進んだ企業のDXについて「道半ば」だと述べつつ、両社のソリューションでアナログ領域のさらなるデジタル化を目指す。
業務プロセスのデジタル化は喫緊の課題ながらも、コロナ禍でハイブリッドワークが浸透したように見えたが、一部の企業は従業員の出社を強制し、押印まで復活させたとの話も聞こえてくる。筆者個人の意見としては経営層の判断に首をかしげざるを得ないが、背景には業務に残ったアナログ工程の存在が大きい。下図はDTRAのスライドだが、業務工程の多くは自動化、半自動化を実現しているものの、アナログ領域をデジタル化する工程やアナログ業務をそのまま処理する場面は少なくない。さらには電子帳簿保存法やインボイスなどデータ化を背景とする法整備を鑑みれば、業務工程のフルデジタル化は避けて通れない道筋である。
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OpenText Extended ECMは文書のライフサイクル管理を主目的とするプラットフォームで、オープンテキストが得意とする情報&デジタルコンテンツ管理とビジネスネットワークを生かしたソリューションだ。例えば取引先から受け取ったPDFファイルをファイルサーバーに格納すると混乱が生じるのは火を見るよりも明らかである。だが、各種SaaSと連携するOpenText Extended ECMを設置することで、ファイル管理負担を大幅に削減する。オープンテキスト リードソリューションコンサルタントの西野寛史氏は「部分最適ではなく将来を見据えた全体最適」につなげていくと話す。同社は企業で保有・活用されるデータの80%を占める非構造化データを制御可能にすると自負する。
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Deep ICRは人工知能(AI)を用いた光学文字認識(OCR)ソリューションだ。前述した非構造化データの可視化を担い、属性データを付与することで担当者のデータ管理業務を軽減する狙いがある。さらにデロイト トーマツ グループの業務支援サービスである「Advisory Services」を組み合わせることで、データのサイロ化の回避や一括管理を実現していく。同ソリューションは既に多くの企業に導入され、鉄道業界や製薬業界、公共領域で活用されている。
トーマツ リスクアドバイザリー事業本部 新規事業推進 マネジャーの小寺洋輝氏は、「(例えば)請求書や契約書業務に対して個別パッケージを導入すると、サービス理解に要するスキルセットが分散する。業務視点でもERP(統合基幹業務システム)の伝票情報とひも付いていない請求書原本を見つけることは難しく、単なる電子化は業務効率化につながらない。さらにガバナンスの観点からは個別のセキュリティポリシーを反映できず、パッケージごとの権限設定の整理・分離が必要になる」と注意を促しつつ、連携かつ一括したソリューションの有用性を強調した。
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