スタイリングサービス「DROBE」を展開するドローブは、独自のAIと自社のデータを活用し、ファッション業界に新風をもたらそうとしている。 DROBEは、スタイリストとAIがユーザーの好みや体型、予算を基に洋服や靴、小物類を5点選択し、定期的に配送するサービス。ユーザーは届いた商品を試着でき、気に入ったら購入する仕組みだ。同サービスの会員数は15万人以上、取り扱うブランド数は200以上、商品数は40万種類以上に上る。
DROBEは、社内向けの管理画面の裏側でAIが過去数十万件のデータから「商品とユーザーの相性を示すスコア」を算出し、スコアを基に商品を並び替える。スタイリストは、その並びを参考にしながら各ユーザーに適した商品を選定する。AIの導入により、ユーザー1人当たりの商品選定時間は、約4時間から約15分にまで短縮したという。
同社は、15万人以上のユーザーデータを基にオリジナル商品の開発にも挑戦。取り組みを本格的に開始した2022年春夏シーズンでは、消化率が9割に上ったという。
AIを活用した商品開発では、「色」「サイズ」「価格」「デザイン要素」を組み合わせ、1商品当たり1万通り以上の「キーワードの組み合わせ」を作成する。AIがユーザーとの相性をスコア化し、スコアが高い組み合わせをサンプル化する。その上で、ドローブのスタイリストが着心地や細かいデザインを調整して仕上げる流れだ。色やデザインの種類は膨大に存在するが、数多くのブランドや商品を扱っている同社は、以前からそうした情報をシステムに取り込んでいたという。
オリジナル商品で手応えを得たドローブは、アパレルブランドと協業してユーザーのニーズに応えるコラボレーション商品の開発に着手。その中で、女性向けアパレルブランド「NOLLEY'S sophi(ノーリーズ ソフィ)」とボウタイブラウスを製作し、2月末からDROBEで取り扱うほか、同ブランドの店舗とECでも販売している。ドローブ 最高マーチャンダイジング責任者(CMDO)の佐熊陽平氏とNOLLEY’S 取締役執行役員 第一事業部部長の小島直樹氏に、AIを用いた商品開発の内幕を聞いた。
NOLLEY’S 取締役執行役員 第一事業部部長の小島直樹氏(左)とドローブ CMDOの佐熊陽平氏(右)
NOLLEY'S sophiは、30代前後の働く女性をメインターゲットとしたブランド。ベーシックなデザインと透明感のある色合いが特徴で、着た人が仕事やプライベートで良い印象を持ってもらえるような商品を展開している。
DROBEはもともとNOLLEY'S sophiの商品を扱っており、ドローブ側から自社のデータを活用したコラボレーション商品の開発を持ちかけたという。NOLLEY’Sの小島氏は「当社は販売員経由で得られたお客さまのニーズをものづくりに生かすことを大事にしているが、都心から郊外までさまざまな地域に出店している分、ニーズの内容には開きがある。その結果、“自社ブランドの方向性に合ったニーズ”を優先的に取り入れてしまうこともあった。今回、15万人以上のユーザーデータから導き出されたキーワードを基に商品を開発するお話を頂き、われわれとしてもチャレンジしてみたいと思った」と話す。
一方、NOLLEY’Sに声を掛けた理由について、ドローブの佐熊氏は「第一に、当社のスタイリングサービスにおいて、NOLLEY'S sophiの人気が高かったことがある。加えて今回は新しい取り組みである分、ブランド側の抵抗も予想されたが、日々のやりとりから『NOLLEY’Sさんであれば、熱意を持って聞いてくれるのではないか』と思った」と振り返る。