Scaled Agile-Japanは4月19日、大規模組織におけるアジャイルを推進するためのフレームワークの最新版「Scaled Agile Framework(SAFe) 6.0」に関する記者説明会を開催した。ビジネスとITの両面でアジャイルをより実践していくための内容を強化している。
Scaled Agile Framework(SAFe)の経緯
SAFeは、ソフトウェア開発のリーンやアジャイルの考え方を基に、組織が俊敏性や柔軟性、変化への対応力などを兼ね備えたビジネスを展開していくための方法論となる。カントリーマネージャーの古場達朗氏によれば、世界では約2万社がSAFeを採用し、110カ国以上で約100万人が受講している。国内では、NTTデータが認定グローバルパートナーとなっているなど大手IT各社がSAFeのパートナーに名を連ねている。
最新版のSAFe 6.0は、グローバルでは3月16日にリリースされた。今回の説明会では、最高製品責任者のInbar Oren氏が、「次なる進化」と位置付けるSAFe 6.0の(1)ビジネスアジリティーの基盤を強化する、(2)チームを支援し責任を明確にする、(3)バリューフローを加速する、(4)SAFeでビジネス全体のアジリティーを強化する、(5)AI・ビッグデータ・クラウドで未来を構築する、(6)メジャー&グローとOKRでより優れた成果を達成する――の6つの主なテーマを紹介した。
(1)では、「バリューフロー」と呼ぶ価値の創造・提供の概念をビジネスの俊敏性によって、さらに加速させていくことができるよう昇華させたとし、そのための各種ガイダンスを具体化。リーンの原理・減速の見直しや、インプリメンテーションにつなげていくロードマップの改善なども図ったという。
(2)では、ビジネスのアジャイルを「人」が実現していくとの本質に照らし、それを担うチームの各種の役割やそれぞれの責任、責務についてより明確に記述したほか、チームとしての成果を高めていくための方法論やチームコラボレーションの在り方を詳しく解説している。
アジャイルを実現していくチームにおける役割や職務、職責を体系化している
(3)はSAFe 6.0の最も重要なテーマだといい、バリューフローを加速させていく上で障害となる部分や障害を乗り越えていくための問題の特定や測定、解決といったポイントを解説。ここでは、「作業状態の可視化」や「ボトルネックの対処」「引き継ぎや依存関係の最小化」「迅速なフィードバック」「小さいバッチでの作業」「キューを短くする」「集中する時間の最適化」「従前のポリシーとプラクティスの修正」といったバリューフローの加速手法やそれらをチームの特性に応じて実践していくすべといったものを取り上げている。
「バリューフロー」を加速させるための8つの手法
(4)では、利用者の声を反映して、SAFeを活用しながらビジネスとテクノロジーの両面から俊敏性を向上させていくポイントを強化。複数のパターンに分類し、各パターンの特徴や意義を解説しており、組織全体を1つのチームに見立て経営層がリーダーとして俊敏性を体得していく仕組みや方法論など盛り込んだほか、IT部門以外の組織における成功事例や体験も紹介する。
テクノロジーとビジネスの両面でアジャイルに実践していくモデル
(5)では、AIやビッグデータ、クラウドなどのテクノロジーをビジネスの俊敏性につなげていくためのアプローチを解説し、(6)ではビジネスの俊敏性を発揮してバリューフローを高速化し最終的な成果を達成できているのか測定していく「Objectives and Key Results」(OKR)と呼ぶ方法論を解説している。
SAFe 6.0は日本語を含む7つの言語で世界各地に提供され、Oren氏は、大規模アジャイルを志向する組織や人々がSAFe 6.0にアクセスして学び実践し、ユーザーを支援するコンサルティングなども強化していくと説明。新たな仕組みという「SAFe Studio」を導入しており、SAFeの学習や実践、管理、パートナーコンテンツの活用といった機能をサブスクリプションベースで提供するという。
「SAFe Studio」でのSAFeの実践を支援する機能