調査

生成型AIは業務の生産性向上に貢献する--全米経済研究所の調査

Sabrina Ortiz (ZDNET.com) 翻訳校正: 編集部

2023-04-25 10:27

 職場における生成型の人工知能(AI)について考えるとき、われわれはAIによって仕事が奪われるという最悪のシナリオを思い浮かべがちだ。しかしある研究によると、生成型AIのツールは働く者にとって、特に顧客サービス分野で働く人々にとって、プラスの影響をもたらすものになり得るという。

机の向かうロボット
提供:Westend61/Getty Images

 全米経済研究所(NBER)の調査報告書では、生成型AIを用いることで、コールセンターにおける顧客サポート担当者の1時間あたりの問題解決件数が増加し、生産性が平均14%向上したというデータが紹介されている。

 この調査では、Fortune Global 500に名を連ねる、あるソフトウェア企業の5000人を超える顧客サポート担当者のデータが使用された。これらのサポート担当者らは、OpenAIが開発した大規模言語モデル(LLM)であるGPT(Generative Pre-trained Transformer)の最新のバージョンで構築されたツールを作業支援目的で使用した。

 このLLMは、顧客とのやり取りをリアルタイムで監視し、担当者に対応方法を提示する。その結果、担当者はより迅速に問題に対応できるようになり、1時間あたりに回答するチャット数が増え、問題をより適切に解決できるようになったと同報告書は記している。

 この調査では、スキルや経験が不足している担当者ほど生産性が大きく向上したという点も明らかになった。

 このAIツールは経験の差を埋める上で有効だった。業務経験が2カ月の従業員がAIを使用した場合の生産性は、業務経験が6カ月で、AIを使用していない従業員と同程度だった。

 つまり、スキルに長けた従業員はAIの支援を受けたとしてもさほど生産性が向上しないということだ。その理由は、AIの支援が本質的に、熟練者が身に付けている知識の模倣であるためだ。

 またAIは、従業員の生産性を最適化するだけでなく、従業員に対する顧客の人当たりを改善する上でも役立つため、通話を責任者にエスカレーションするケースの削減につながったという。

 総じてこの調査は、AIによって単に人間の仕事が置き換えられていくのではなく、支援を受けられるというプラスの可能性を示す、現実世界での事例を提示している。

この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]