未経験から日立のトップデータサイエンティストに--データ分析コンペで磨いた“実践力”

石田仁志

2023-06-01 07:00

 2022年10月にスペインで行われた世界的なデータ分析コンペプラットフォーム「Kaggle」の世界大会において、日立製作所(以下、日立)の諸橋政幸氏が参加するチームが3位入賞を果たした。

 同氏はデータ分析の部署に異動となってから、これまで本業以外の時間で国内外のデータ分析コンペにエントリーして数多くのメダルを手にするとともに、データサイエンティストとしてのスキルを磨き上げてきた。データ分析コンペへの挑戦と自身のデータサイエンティストとしてのキャリアをどのようにリンクさせてきたのか、諸橋氏に聞いた。

データ分析のスキルを習得するため分析コンペに挑戦

 諸橋氏は、データから価値を生み出すデジタル事業「Lumada」を推進する日立において、データサイエンスのエキスパートチームである「Lumada Data Science Lab.」ならびにデジタルエンジニアリングビジネスユニット 「Data&Design Data Studio」に所属し、同社ただ一人の「シニアデータデザインエキスパート」という肩書を有して、独自の立ち位置でデータサイエンティストとしての活動を続けている。

 「年齢が上がるとマネージャーになって自ら手を動かさなくなるという形が一般的だが、私は技術専門職で直接の部下を持たず、今も現場に出てお客さまと対話し、自分で手を動かして分析の仕事をしている。それに加えて、社内で勉強会や相談会を開いてデータサイエンティストの育成やスキルアップに取り組むのが私のミッション」(諸橋氏)

 諸橋氏は、1999年に新卒で日立に入社。情報セキュリティ業務を8年担当し、金融事業部で4年間業務に従事した後、2012年に新設されたデータ分析/AI部署に異動となり、そこで初めてデータ分析の道へと足を踏み入れた。当時はビッグデータブームが始まったところで、各部署から1人ずつ抜てきされる形での異動ではあったが、年齢も30代後半に差し掛かる中で未経験のデータ分析の仕事をするに当たり、暗中模索でたどり着いたスキル習得のメソッドが、「案件の経験+データ分析コンペの参加」という方法論であったという。

 「データサイエンティストにはPythonのプログラミングやデータを使った技術的な作業だけでなく、その前段でお客さまとの対話力やビジネス力、コンサルティング力が必要になる。その上で、求められるスキルセットも途方もない量になる。ひたすら本を買いあさって勉強したが、付け焼き刃の知識だけでは不十分で、知識を生かすには経験しないとダメだと実感した。ただ実務だけだと経験できる件数が限られる。そこで、より多くの課題や生のデータに触れたいと思い、2015年からデータ分析コンペに参加するようになった」(諸橋氏)

参加者のモチベーションを高めるオープンな競争環境

 データ分析コンペでは、課題提供側として多くの大手企業や行政機関が課題を提示し、それに対して参加者が機械学習のモデルを作って分析を行い、予測の精度を競う。一般的な分析案件の場合、顧客と分析者が契約関係のもと1対1で分析をするのに対し、コンペの場合は間にプラットフォームの運営者が入る。

 まず運営側が企業などから課題を集めてきて、そこに参加者が自由にエントリーし、分析モデルを作ってスコア競い、上位入賞者のモデルを発注者に返す仕組みだ。そのため発注者としては1社に頼むよりも優れた分析モデルが得られる可能性が高くなり、参加者も幅広い種類の案件に参加できるなど、Win-Winの枠組みが形成されている。

分析案件とコンペの違い
分析案件とコンペの違い

 特にデータサイエンティスト側には、モチベーションが高まる仕掛けが数多く用意されている。まず経験値を得るという部分では、普通なら正式に受注しないと触れられない生のデータに触れられる。その上で報酬としての賞金に加えて、データサイエンティストの競争心をくすぐるように、コンペごとに複数の上位入賞者・チームに金・銀・銅のメダルが付与され、取得状況に応じて「Grandmaster」「Master」「Expert」などの称号が与えられる。

 コンペの成績は全て公開されていて、これまでの参加実績などから決定される変動制のランキングがその都度表示されるため、技術者にとってはそれらが継続的に頑張り続けるためのモチベーションとなる。

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