消費財業界のグローバルリーダーや意思決定者は収集するデータや情報源を増やしているが、それによってビジネスプロセスが複雑化する可能性もある。Salesforceが発表した調査レポート「2023 Consumer Goods Industry Insights Report」によれば、データをビジネスに活かすのはそう簡単ではないという。
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同社は、世界の消費財業界の意思決定者1500人を対象として調査を実施した。調べたのは、消費財メーカーが次のような目標をどのように達成しようとしているかだ。
- 効率的な成長の実現
- 敏感でデジタルファーストな消費者の心をつかむ
- 新たな機会の発見と活用
調査では、北米、アジア太平洋地域、欧州の幅広い消費財メーカーの意思決定者から回答を募った。調査で明らかになった3つの主な結論は次のようなものだ。
- 肝心なのは効率的な成長:コストの高騰と価格に敏感な消費者に利益を圧迫され、企業は利益幅を増やすことに力を入れている。回答者の90%は、今後24カ月間で利益を伴う成長を遂げられると見込んでいる。
- 最重要課題はデジタルエンゲージメント:消費財メーカーは、デジタルマーケティング、デジタルサービス、D2Cによる直接販売に投資することによって、消費者とのつながりを構築している。また、ほかどのマーケティングチャネルよりも、ソーシャルメディアへの投資を優先している。
- デジタル化は複雑さとチャンスの両方を増幅する:データの収集はうまくいっているが、それを行動に生かせているかどうかはまた別の問題だ。現在の消費財メーカーのマーケターは、平均で18種類の情報源からデータを収集しており、2021年の10種類から大幅に増加した。
消費財メーカーの意思決定者のうち9割が、今後24カ月間で利益を伴う成長を遂げられると考えているのは素晴らしいことだが、競争の激化や、原材料費や人件費の上昇、顧客の期待や行動の変化などをはじめとするサプライチェーンの問題がなくなるわけではない。そのため、製品のイノベーションが成長の鍵だとみられており、これにはデジタルマーケティングへの移行、顧客への直接販売、新たな製品カテゴリーへのブランドの拡大、実店舗におけるマーチャンダイジングやプロモーション戦略の改善が含まれている。
肝心なのは効率的な成長
消費財メーカーにとって、効率的な成長は小売販売の最適化から始まる。回答者の3人に1人以上(36%)は、チャンスを得るためには、実店舗におけるマーチャンダイジングとプロモーションを改善することが重要だと考えている。調査では、実店舗での製品やマーケティングに関する取り組みの38%が、意図したとおりに実行されていないことが明らかになった。多くの消費財メーカーは、店頭での販売状況の改善にチャンスを見出しており、回答者の26%は、トレードプロモーション(消費財メーカーが卸売業者や小売業者に対して実施する販売促進活動)支出の最適化が重要だと考えており、36%は実店舗でのマーチャンダイスとプロモーションの改善を重要だと考えていた。