パナソニック ホールディングスは6月9日、既存のビルを対象にしたサイバーセキュリティ監視サービスの提供を開始すると発表した。国内初のビルオートメーション向け通信規格「BACnet/IP」の制御コマンドレベル監視に対応し、「既存のビルでも設備への影響を最小限に抑えながら導入でき、導入時の人的、技術的なハードルが低いのが特徴」(テクノロジー本部 製品セキュリティセンター サイバーセキュリティ技術開発部 セキュリティ基盤技術開発課 リードエンジニアの大庭達海氏)とした。
東京建物のビルに提供するサイバーセキュリティ対策サービスの概要
第1号案件として、東京建物が持つ首都圏の既存ビルへの本格導入も明らかにした。今後ほかのビルへの展開も検討しており、既に複数のビル不動産会社との協議を開始している。2023年度中に不動産各社が所有するビルにも事業を拡大する意向を示した。BACnet/IPは、延べ床面積1万平方メートル以上の大型オフィスビルに導入されていることが多く、首都圏でも数百棟あると見られる。
これまでは開発フェーズで、パナソニック ホールディングスのテクノロジー本部が担当してきたが、今後はパナソニック エレクトリックワークス社が事業化を推進する。2030年度までに26億円の事業規模を目指すとした。
今回のサイバーセキュリティ監視サービスは、パナソニック ホールディングスが持つビルセキュリティ監視の技術やノウハウを用いて、既存のビルに、サイバー攻撃などの脅威の検知、資産管理、証跡管理などが可能な監視設備を追加導入する。脅威検知機能が検出した異常な通信パターンや不審な挙動に同社のセキュリティ分析官が遠隔で対応し、原因分析と影響分析をリアルタイムに行い、ビルの運営者やテナントに重大なサイバー攻撃や異変が生じていることを素早く報告、迅速に対処できるよう支援する。
パナソニック ホールディングス テクノロジー本部 製品セキュリティセンター サイバーセキュリティ技術開発部 セキュリティ基盤技術開発課 リードエンジニアの大庭達海氏
第1号案件では、東京建物から提供されるビルオートメーションシステムネットワーク内の設備資産の情報と、パナソニック ホールディングスがリアルタイムに監視して得た設備情報を突合することで、各設備資産の稼働情報をリアルタイムに更新し、攻撃監視に役立てる。検出された脅威情報は、速やかに東京建物の関連部署やビル管理会社に共有され、緊急時の迅速な対応を実現する。
大庭氏は、「ビルのサイバーセキュリティ監視は、工場や自動車、家庭とは異なる特徴があり、それに合わせる必要がある。大規模ビルは設備数が多く、一般的なセキュリティ監視手法を持ち込むだけだと、アラートの数ばかりが増加し、絞り込みが行えないといった課題がある。全館消灯や閉じ込め、締め出しといった防犯設備などから生まれるリスクも想定され、ビル運用に関わる知識とサイバーセキュリティに関する知識がないと、サイバー攻撃か、運用ミスなのかなど判断できない」と指摘する。