アドバンスト・メディアは、MicrosoftとOpenAIの大規模言語モデル「GPT-3.5/4」を活用した「要約業務支援システム」を開発した。7月上旬から茨城県取手市で同システムの試行を開始するという。試行開始に先立ち、同社は6月26日に同システムに関する説明会を開催した。
要約業務支援システムは、アドバンスト・メディアが提供するAI音声認識「AmiVoice」によって自動でテキスト化した議会の質疑応答を、一問一答の簡潔な文章などに要約する。GPT-3.5/4を活用することで、要約後に必要な人の手による修正を省き、議事録作成と要約にかかる業務負荷を軽減できるとしている。
AmiVoiceとGPTを連携させた要約業務支援システムの概要
同システム開発の背景について同社は、「市区町村のAI導入率の低さ」と「地方公共団体の総職員数の減少」を挙げ、DXによる自治体の業務効率化が急務であることから、地方自治体のDXを推進する目的で開発を行ったという。
同システムを試行する取手市役所では、市議会だより「ひびき」を発行しており、年に4回開催される同市議会の定例会における発言内容の要約文を掲載している。2006年には議事録作成にAmiVoiceを導入し、議会事務局職員の人員削減や労働時間を削減するとともに、庁内議事録の作成や定例記者会見などでもAmiVoiceを活用し、迅速に速報版を出せる体制を整えているという。
また、2021年には同社と取手市、取手市議会の3者により、「音声テック関連技術連携協定」を締結。デモクラシーとテクノロジーの掛け合わせによるIT活用で新しい民主主義を創造する「デモテック戦略」を推進している。その一例として、「Zoom」などを用いたオンライン会議においてAIを活用し、字幕のように文章を画面下に表示する。これにより、聞き逃しや聞き間違い、聴覚に障害を抱える人でも会議に参加できるようになった。
今回、同市では要約業務支援システムを導入することで、さらなる業務効率化を図るとしている。同システムは、「ひびき記事(一般質問)作成支援ツール」「ひびき記事(一般質問)作成支援ツール 要約条件指定」「ひびき記事(討論)作成支援ツール」「広報・一般業務支援ツール」――の4つのツールで構成されている。
これらのツールでは「Azure OpenAI Service」を用いることを前提としており、入力したデータはMicrosoftの情報取り扱いポリシーの範囲内かつ二次利用されないようになっている。また、一般業務支援ツールにおいては、非公開情報を扱う可能性があるため、同社のサーバーにデータを残さない設定で運用する。
同市役所では従来、ひびきに掲載する「一般質問」の要約文の作成において、職員が、会議録A4用紙10枚分に相当する一般質問の全文を読み込み、重要部分を取捨選択。抜き出した部分をマーカーで印を付け、重要部分をさらに短くまとめていた。この作業は、最大で市議会議員23人分を行うことがあり、全てを要約するまで1週間程度かかることがあったという。
しかし、GPTを用いた要約業務支援システムを活用することで、質問に対する重要な回答を抽出し、文章を生成。「あれ」や「それ」などの指示語が明確な単語として抽出されるため、人の手で文言を整理する必要がなくなるという。
ひびき記事(一般質問)作成支援ツールの利用画面。議事録を要約した文章が右画面に出力される
また、広報紙「広報とりで」においても同システムを活用する。従来は、各部署から所定のフォーマットで送られるイベントや検診情報を基に広報紙用の見やすい表を人の手で作成していたが、同システム導入により、「会場」「時間」「イベント内容」などの必要項目を指定するだけで、自動的に表が作成される。
定例会における一般質問の議会録を、作成支援ツールを用いて要約したもの
取手市役所は生成AIを、広報やプレスリリースの文章作成、各種会議議事録や概要版の作成、文章の要約などに用いるとしている。また、運用時には個人情報や機密情報、プライバシーに配慮したものであるかを所属長と確認し、承認後に利用する方針だという。同市では生成AIの利用に当たり、全庁的に職員研修を実施していく構えだ。