内山悟志「デジタルジャーニーの歩き方」

持続可能性と回復力を持った事業構造--DXが定着した企業の要件(その5)

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2023-07-19 07:00

 デジタルトランスフォーメーション(DX)を完全に定着化させ、「デジタル」と「変化」が前提となる時代で企業が生き残り、成長し続けるためには、ビジネスとマネジメントの構造を変革しなければなりません。そのためには、持続可能性と回復力を具備したコンポーザブルな構造にすることが重要です。

求められる持続可能性と回復力

 前回は、DXが定着した企業の5つの要件の4つ目の要素として「創造的な挑戦を促進する組織カルチャー」を挙げました。今回は、最後のポイントである「持続可能性と回復力を持った事業構造」について考えていきます。

 変化という言葉が昨今の経営やビジネスを支配しているといっても過言ではありません。もはや、自社製品の半年後の市場価格さえ予測できず、異業種からの市場参入、顧客の好みの劇的な変化、競合企業同士の合併、主要原材料の不足や価格高騰といった自社の経営を揺るがすような大変動さえも予見することが不可能になっています。

 現在のような予測困難な不確実性の中でビジネスを成長させていくためには、環境変化に対する適応力が最も重要であり、荒波の中でも倒れることなく進み続ける「持続可能性」(サステナビリティー)が必要となります。また、新型コロナウイルスの感染拡大や原材料費の高騰といったビジネスに大きな影響を及ぼす環境変化によって、たとえ大きな打撃を受けたとしても、そこからいち早く立ち直ることができる「回復力」(レジリエンス)が求められます。

 例えば、海外からの部材調達が困難となった際に、即時にサプライチェーン(供給網)を組み替えて、国内調達に切り替えられるような能力を備えておくことです(図1)。

 DXによってこれまで述べたような「デジタルを駆使した仕事と働き方」「データドリブンな意思決定」「多様な人材と柔軟な組織運営」「創造的な挑戦を促進する組織カルチャー」を実現することは、持続可能性と回復力を手に入れることにほかなりません。コロナ禍で経験した物理的な活動の制限が、企業におけるデジタル化への対応力の差を浮き彫りにしたことは記憶に新しいでしょうが、このような不測の事態はいつでも起こり得ることを前提に事業や組織運営の構造を組み立てておかなければなりません。

図1.求められる持続可能性と回復力とは 図1.求められる持続可能性と回復力とは
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持続可能性と回復力を実現するコンポーザブルな構造

 ビジネスや経営に持続可能性と回復力を持たせる構造として「コンポーザブル」という考え方が注目されています。コンポーザブルとは、複数の要素や部品などを容易に分解し、結合することで再構成や組み立てが可能な構造を持つことを意味します。これに対して、分解や再構成が困難な一枚岩の構造を「モノリシック」と呼びます(図2)。

図2.コンポーザブルな構造とは 図2.コンポーザブルな構造とは
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 コンポーザブルな構造を持った企業を「コンポーザブルエンタープライズ」と呼び、環境変化や不測の事態に適応して、ビジネス、組織、業務プロセス、働き方、ITシステムなどの各レイヤーで複数の選択肢が高度にモジュール化され、それらを迅速に再構成できる構造を持った企業を指します(図3)。

 コンポーザブルを実現するための各レイヤーの要件は次の通りです。

  • コンポーザブルなビジネスモデル:「モノ売り」と「サービス提供」、「バーチャル」と「リアル」、「自前主義」と「脱自前主義」、多様な対象市場や顧客層、オープン&クローズ戦略など自在に組み合わせてビジネスを展開できる
  • コンポーザブルな顧客対応やバリューチェーン:調達元や調達経路、取引形態、製品・サービスの提供形態や販売経路、顧客対応の方式やチャネルを臨機応変に組み替えたり、変更したりできる
  • コンポーザブルな社内業務や働き方:場所や時間の制約に捕らわれない働き方に対応でき、ビジネス環境や顧客ニーズの変化に応じて、柔軟に業務プロセスや組織体制を変更できる
  • コンポーザブルな業務システムやITインフラ:軽やかに始動でき、業務や要件の変化や多様性に対応して、システムやデータの連携・拡張・変更を迅速かつ円滑に行える
図3.コンポーザブルエンタープライズとは 図3.コンポーザブルエンタープライズとは
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