Ridgelinezは、富士通グループのDXビジネスをけん引するコンサルティングファームとして2020年に設立されて以来、幅広い業界のクライアントのDXを支援してきた。これらのプロジェクトの初期段階でしばしば耳にするのが、「これまで適切な投資と人材のアサインによって全社規模のDXに取り組んできたが、思ったような成果につながらない」というクライアント側の切実な悩みだ。
こうした状況に多くの日本企業が置かれていることを踏まえ、本連載は、CIOの「人起点」DXマニフェストをテーマとした。「人起点」としたのは、どのようなテクノロジー、システムを導入するのか、そこからどれだけの価値を引き出し、ビジネスの成果につなげていけるかは、全てが「人」にかかっているからである。
しかし、DXに取り組む日本企業の現場を見ると、ビジネスを理解している人ならではの、戦略的な視点が欠けている面を否定できない。クラウド、AI、IoTといったテクノロジーの新規性に目を奪われるあまり、それを自社の強みと組み合わせた独自の価値に転換することができていないのだ。本連載のテーマとして、「人起点」を掲げた狙いも、まさにそこにある。
そこで、連載の第1回は、企業がDXを推進する上でのキーパーソンである最高情報責任者(CIO)にフォーカスしてみたい。経営層と業務の現場をつなぐ架け橋として大きな役割が期待されるCIOが現在置かれた状況を整理することにより、そこで求められる戦略も明らかにしたい。
DXの成功に不可欠なCIOの強力なリーダーシップ
企業のCIOを取り巻く環境は、時代の変化とともに大きく変わりつつある。基幹システムなどの開発や運用・保守、コスト管理がCIOの主な守備範囲とされた時代は、既に過去のものとなっている。ITがビジネスを行う上での重要な基盤となった現在、CIOには自社のビジネスを深く理解し、テクノロジーを活用して、変化する市場に柔軟に対応しながら競争力を高めていくための戦略的な視点が求められるようになっている。
こうした変化は、CIOの周辺や組織の内部に限ったことではない。企業を取り巻く外部環境、すなわち社会そのものや経済、カルチャーなど、全てが過去とは比較にならないスピードで変化している。このことは、10年ほど前までは「機密データを社外に置くのは危険」と言われていたクラウドが、今では当たり前のインフラとして定着していることを見ても明らかである。そして、こうした劇的な変化に柔軟に適応しながら、新たなビジネスチャンスを創出していくための最優先の課題となっているのがDXだ。
企業のDXの取り組みの中でCIOは、テクノロジーを通じて企業の成長戦略を支えるキーパーソンである。Ridgelinezも「人起点のテクノロジー変革」を提唱しており、その成否は、まさにCIOのリーダーシップにかかっていると言っても過言ではないだろう。