最も重要なことは、馬は主に非言語的な方法でコミュニケーションを取っているということだ。馬は、耳を動かして周囲の動きや脅威の音を追いかけている。また、人間の話を聞いているかどうかも耳の動きで分かる。これは、狩られる側の動物にとって、コミュニケーションのために音を出せば死に繋がる可能性があるからだ。
そのほかの非言語的なサインには、鼻面の緊張具合や、首を上げる、威嚇をエスカレートさせる、足踏みするなどの行為がある。
人間とロボットの協力と対話の未来
では、人類に奉仕するように設計されたロボットが大きな役割を果たす未来で、この知識はどう役に立つのだろうか。
非言語的なサインが重要な役割を果たす可能性があるシナリオとしてJain氏らが思いついたのは、人の聴覚に障害があるケースだ。

米フロリダ州ゲインズビルにあるフロリダ大学の馬の調教施設で調教されている馬。
提供:フロリダ大学
人間の話を聞いているときには人間のほうを向き、ノック音を聞いたときはドアのほうを向くような耳を持ったセラピーロボットを作ることも考えられる。
Jain氏らが馬特有のものだと感じたもう1つの特徴は、敬意の表し方だ。
「通常は、人間とロボットの相互作用の文脈で、敬意について考えることはない」と同氏は言う。「ロボットはどんな風に人間に敬意を払うことができるだろうか?馬と同じような行振る舞いを設計に組み込むことはできるだろうか?そうすれば、人間はロボットと一緒に働くことにもっと前向きになれるだろうか?」
若い馬は、早い時期から人間が近づくとその場から離れたり、後ずさりしたりするように調教される。同様に、調教師のペースに合わせて馬が動くときは、その馬が人間に敬意を払っていることを示している。
病院で看護師や医師をロボットが支援する際には、出しゃばってはならず、人間の動きに合わせて止まったり動いたりする必要がある。これなどは、この設計原則が現実のシナリオで役立つ場面だと言えるだろう。