オブザーバビリティ(可観測性)プラットフォームを提供するNew Relicは9月13日、コーポレートカンファレンス「FutureStack Tokyo 2023」を開催した。4年半ぶりの開催となる同カンファレンスの基調講演には最高経営責任者(CEO)を務めるBill Staples氏が登壇した。
今回が初来日となるStaples氏は、MicrosoftやAdobe、そしてNew Relicといった企業での経験を通して、これまで30年近くソフトウェア開発に携わってきたという。その中で、ソフトウェアが人々の生活を変え、豊かにするのを見てきたが、ソフトウェア開発は大変な作業だと同氏は振り返る。
New Relicは、データの提供によってソフトウェア開発を簡単にすることを目指しており、エンジニアが意見でなくデータに基づいた意思決定をソフトウェアライフサイクルの各段階でできるようになることを考えている。世界中にいるエンジニアや企業がデジタルビジネスをきちんとできるよう支援したいという。
Bill Staples氏
Staples氏は、同社が現在支援しているエンジニアの課題として3つを挙げる。まず、今日、ソフトウェアを構築する場合、クラウドを利用する必要がある。クラウドを使うことで演算処理能力やストレージを容易に調達でき、多数のユーザーにリーチできるサービスを構築できるが、同時に複雑さももたらすと同氏。その複雑さや規模の大きさを管理するにはデータドリブンのアプローチが必要だと続ける。
また、過去10年、どの業界のあらゆる企業も顧客にサービスを提供するためにデジタルアプローチを採用してきている。製造や小売、飲食やホスピタリティーサービスに至るまで誰もが顧客を支援するためにデジタル体験を提供しているが、自社サービスがどのように機能し、顧客がどのように体験を得られているかを理解するには、データが必要になる。
3つ目として、技術は進化を続け、より複雑になっていることがある。あらゆる開発者や企業が現在の最新トレンドである生成AIや大規模言語モデル(LLM)といった技術をより良いデジタル体験のために取り入れたいと考えている。しかし、これらは新たな技術として学習や統合、管理を必要とするためデータが求められる。
Morgan Stanleyの調査によると、ビジネスアプリケーションは前年比30%で増加しているという。新しいアプリケーションが構築されるごとに、企業は、「顧客に届いているか」「顧客は満足しているか」「顧客は意図した価値を受け取れているか」といったことを確認し、開発者は、「どこにバグがあるか」「どこで最適化ができるか」「アプリケーションを改善できるか」を考える必要がある。このような疑問に対し、「New Relic」は答えを提供することができるとStaples氏は強調する。
障害が発生してサービスが利用できなくなった場合、復旧までの時間はおよそ30分であることがMorgan Stanleyの調査から明らかになっている。80%の顧客はサービスが1分停止しただけで利用を止めて他のサービスに切り替えることも分かっており、サービスのダウンタイムによって生じる損失は年間7000億ドルに相当することを同調査は示している。
サービスのダウンタイムが生じるのは多くの場合、ソフトウェア構築の複雑さが原因とStaples氏は指摘。インフラ、セキュリティ、ネットワーク、モバイルなどを専門とするチームがそれぞれ異なるツールを使うことでサイロ化が発生している場合、サービスの状態をどうやって全体的に理解できるのかと疑問を投げかける。
5つ以上のツールを利用している同社顧客の割合は、グローバルで75%以上を占め、日本ではさらに高く89%だという。これら一つ一つのツールがデータのサイロ化とコスト上昇を意味し、開発者にとってはツール間を行き来する必要を生じさせるとStaples氏。New Relicは、さまざまなテレメトリーデータを1カ所の提供するプラットフォームであり、データから洞察を得られるよう支援すると同氏はアピールする。