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ゼレンHD・和田社長に聞く事業構想と設立理由--戦略コンサルやシステム開発など傘下

田中克己

2023-10-30 07:00

 「一番大事なポイントは、ユーザー企業の経営陣と話のできる超上流の人材が大手ITベンダーにいないこと」――。ゼレンホールディングス(ゼレンHD) 代表取締役社長グループCEO(最高経営責任者)の和田千弘氏は、同社設立の理由をこう語る。

 ゼレンHDは、戦略コンサルティングやITコンサルティング、データ分析、システム開発、業務受託などの事業会社を傘下に持つ、コンサルティングとテクノロジーサービスの持株会社として、2023年8月に設立された。テクノロジー企業やコンサルティング会社の合併買収(M&A)などを通じて、2年以内に事業構造をつくり上げる計画だ。

 「多重下請や人月商売などIT産業の構造改革は、ユーザー企業にとってどうでもいいこと」だと、和田氏は既存のIT企業が本質を見失っていると言いたいようだ。

 同氏は大学卒業後、第一勧業銀行、マッキンゼー・アンド・カンパニー、グーグル(事業戦略部門長)、インターブランドジャパン(代表取締役社長CEO)、すかいらーくホールディングス(取締役常務執行役員CTO〈最高技術責任者〉兼CMO〈最高マーケティング責任者〉)、カートサーモン(日本代表マネージングパートナー)など、IT企業からコンサルティング会社、事業会社で経営とITのビジネス実装を経験してきた。

ゼレンHD 代表取締役社長グループCEOの和田千弘氏
ゼレンHD 代表取締役社長グループCEOの和田千弘氏

 また、マサチューセッツ工科大学(MIT)への留学を通じて、「テクノロジーが経営にどんなインパクトを及ぼすのか」「テクノロジーが人の能力を拡張する」といったことを学び、すかいらーく時代に大手ITベンダーにシステム構築を依頼することの課題が見えてきたという。

 大手ITベンダーは、カバー範囲が広く、非常に頼りになるとともに、テストを厳密に繰り返すなど品質や信頼性の高さを評価する。その一方で、「一番大事なことが不足している」と和田氏は指摘する。具体的には、ユーザー企業の経営陣と「資金の効果的な使い方」などを議論できる人材がいない。別の言い方をすれば、「どのように投資すべきか」「自己資本利益率(ROE)を最大化するにはどうすればいいか」「どのようなオペレーションにすべきか」といったことを経営陣と一緒に突き詰めるということだ。

 そうした人材は、戦略系や経営系のコンサルティング会社にいるだろうが、和田氏は経営戦略とITの実装が分散されており、シームレスでないと問題を提起する。では、どこを探せばいいのだろうか。同氏は「大手企業ではなく、スタートアップなどの中小企業にいる」と話す。

 大手ユーザー企業や戦略コンサルティング会社からスタートアップに転職する人もいるだろう。ところが、そうした人々の転職先での仕事は「(8割が)付加価値の低いものであり、非常にもったいない」(和田氏)という。大学の研究室にも目を向ける。理論的な体系だった知識が経営に生かせるのだ。そうした人材を集め、強くする。それが持株会社につながる。

 同社は、ITの力で経営課題を解決するため、事実に基づいた最適解を提案・検証する。「戦略をしっかり定めた上で、必要なIT投資を進める」と和田氏は語る。いわば、“外資系大手経営コンサルティング会社のアップグレード版”を目指すわけだ。「経営が一番大事にしているのはお金の使い方」であるといい、まずは投資効果の向上から始める。無駄なIT投資をしていないかなどもユーザー企業に提案する。

 ゼレンHDの設立に当たって、和田氏らは「戦略コンサルティングとITコンサルティング、そして下流側のバランスを良くすることと、McKinseyさん(McKinsey&Company創業者のJames O. McKinsey氏)が生きていたらどんな会社を作るのか」を考え、経営にインパクトのあるプロフェッショナルサービスを提供する持株会社として、傘下に戦略系や業務系、IT系のコンサルティング、デザイン、システム開発、人材派遣、データ分析などのグループ企業を置いている。

 戦略コンサルタントやデータアナリストなどの人材を集めて会社を新設する一方、システム開発などを提供するリブゲートを傘下に収めている。他にも複数の事業会社を2023年末までに買収する計画。「2024年2~3月をめどに骨格を作り、1年で必要な機能をそろえ、2年以内に事業構造を完成させる」(和田氏)

 こうした事業会社を傘下に配置する持株会社制にしたのは、各社で事業展開や給与体系、処遇が異なるからだ。さらに案件単価が違うなど、各社に独自性を持たせる一方、各社の調和を取る上でも、持株会社が営業や人事、育成といった機能を備え、連携するのが最適だと判断した。

 もう一つの理由がある。例えば、システムエンジニアがITコンサルタントになりたい、戦略コンサルタントがデータアナリストになりたい、といった具合にグループ内に受け皿となる事業会社があれば、人材交流を容易に図れる。自らの経験やキャリアの幅を広げたい従業員の退職を回避できるというわけだ。

 ゼレンHDは、クレアシオン・キャピタルが管理・運営する投資ファンドの出資を受けており、投資家から集めた資金を使って上述の買収戦略を進める。どの程度の規模なのか明らかにされていないが、ゼレンHD 取締役グループCMOでクレアシオン・キャピタルのディレクターも務める井上圭氏は「所有と経営が一体化し、決断が早い」と、理想的な取り組みをダイナミックに展開できるという。マッキンゼー出身者らを中心にスタートしたゼレンHDが半年後、1年後にどんな体制を構築するのか、引き続き注目していきたい。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任、2010年1月からフリーのITジャーナリスト。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書は「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)。

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